自社で経理を行う場合において、会計ソフトはもはや欠かすことのできないツールとなっています。一口に会計ソフトと言っても様々な種類があり、値段も安いものから高いものまで様々です。規模や業種など、会社の状況に応じた会計ソフトの選び方について解説していきます。
会計ソフトのおおまかな分類
まず、会計ソフトのおおまかな分類について説明します。現在、会計ソフトは次の二つに分類することができます。
インストール型の会計ソフト
従来からある形式の会計ソフトでパッケージソフトを購入、あるいはメーカーのホームページからプログラムをダウンロードし、自社のパソコンにインストールして使用します。代表的なソフトとして次のようなものがあります。
弥生会計
会計王
勘定奉行
クラウド型の会計ソフト
ここ数年でかなり普及が進んだ新しいタイプの会計ソフト(サービス)です。自社のパソコンにプログラムをインストールするのではなく、インターネット上でサービスサイトにログインして使用します。
freee
MFクラウド
弥生会計オンライン
インストール型とクラウド型の比較
インストール型とクラウド型、それぞれに利点と欠点があります。
インストール型の利点
- 実績のあるメーカーから発売されている
- サポートが充実(有料サービスに申し込んだ場合)
- オフライン環境(インターネットに繋がっていない状態)で運用できる
- 機能が熟成されている
- 事業規模や業種に応じたラインナップがある
クラウド型の利点
- オンライン環境であればどこでも作業できる。
- 豊富な他のクラウド型サービスとの連携機能
- ネットバンキングやクレジットカード、電子マネーの取引情報のシームレスな取込
- 初期導入費用が安い
- アップデート費用が不要
- インストールの必要がないためwindows以外のOSでも利用できる
- 他のソフトからの乗り換えが容易(仕訳変換機能などが豊富にある)
インストール型の欠点
- 初期導入費用が高額(そうでない場合も有)
- アップデート費用が必要(有料保守サービス申込で不要の場合も有)
- 他のソフトからの乗り換えがクラウド型に比べて困難
- 設計思想が古い(会計上の仕訳ありきの設計思想)
- windows以外のOSでの使用が困難
- データのバックアップを使用PC外でする必要がある
クラウド型の欠点
- 機能が熟成されていない(アップデートによる新機能の追加についていけない可能性)
- 業種や事業規模によっては運用不可能
- パスワードの漏えい等セキュリティ面でのリスクが高い
- サポートが十分でない
- 設計思想が新しすぎるため、従来からの簿記会計に慣れている人には使いにくい面がある
- オフライン環境では作業できない
個人事業主か法人かで異なるラインナップと導入費用
一般的に個人事業主向けの会計ソフトは法人向けのものよりも導入費用は安くなります。その分機能が絞り込まれている場合もあるので、個人事業主でも法人用並みの機能が必要な場合は注意が必要です。同じメーカーから個人事業用向けと法人向けのソフトが同時に販売されていることがあります。個人事業主向けのソフトを販売していないメーカーもあります。
(例1)弥生株式の場合
個人事業主向け…やよいの青色申告、やよいの青色申告オンライン
法人向け …弥生会計、弥生会計オンライン
(例2)マネーフォワードの場合
個人事業主向け…MFクラウド確定申告
法人向け …MFクラウド会計
(例3)JDLの場合
一般ユーザー向けにリリースされているIBEXシリーズは個人事業主向けと法人向けの区別がない
業種に応じた会計ソフトの選び方
業種により相性のよい会計ソフトが存在する場合があります。業種に応じた会計ソフトの選び方をいくつか紹介します。
卸売業
卸売業で得意先や取扱商品が多数の場合、会計ソフト以上に大切なのが販売管理ソフトです。その採用した販売管理ソフトと連携できる会計ソフトを選択するのがベターです。例えば販売管理ソフトとしてソリマチの「販売王」を選択した場合、同社が販売する会計ソフトである「会計王」が第一の候補となってくるでしょう。
飲食業、理美容業
一般消費者をターゲットにした店舗型ビジネスの場合、現金管理でレジは必須です。このレジについて、ipadなどタブレット端末を利用したクラウド型のPOSレジサービスの普及が進んでいます。クラウド型のPOSレジサービスを利用している場合、freeeやMFクラウドといった会計ソフトを利用していればデータの連動が可能であり、現金売上の会計仕訳が自動で生成されます。事務作業の削減に繋がります。
士業、コンサルタント業、ライターなど
会計処理がシンプルな業種(費用項目が少ない)です。売上の入金を可能な限り銀行振り込みとし、電子マネーやクレジットカードをうまく活用すれば現金決済が必要な場面はほとんどなくなります。クラウド型の会計ソフトと相性が抜群です。
建設業
建設業の場合、受注工事の原価管理が非常に大切です。工事台帳を作成できる、あるいは原価管理用のシステムと連携できる会計ソフトがベターであると考えられます。OBCの「勘定奉行」や応研の「建設大臣」などが候補になると考えられます。
デザイナーなどクリエイティブ系の業種
業務用のPCとしてMacを選択する機会が多く、インストール型の会計ソフトを利用するためには別途windowsのPCが必要になる場合がほとんどです。クラウド型の会計ソフトであればPCがMacであっても問題なく利用することが可能です。
社会福祉法人などの特殊な法人
対応しているソフトをリリースしているメーカーが限られているので、他の業種に比べて選択肢が狭まります。また、ソフト自体の金額も高額となります。応研やPCA、JDLなどからリリースされています。
インターネット関連のビジネス
Amazonで商品を出品している、LancersやCloudworksで仕事を受注している、アフィリエイトやGoogleAdsenseの収入があるなどインターネットを利用したビジネスを展開している場合、豊富なAPI連携を利用できるクラウド型の会計ソフトと非常に相性が良いと考えられます。
税理士や会計事務所と契約している場合
税理士や会計事務所から使用する会計ソフトを指定される場合があります。いくらクラウド型の会計ソフトを使用したいからといって、契約している税理士が対応していない場合は連携が上手く取れなくなってしまいます。せっかく契約しているのですから、税理士や会計事務所が指定する会計ソフトを使用するのがベターであると言えます。ただし、高額なシステム利用料を請求される可能性もありますので契約時において十分に話し合うことが大切です。なお、会計ソフトによっては他社のソフトとCSVなどを利用して連携させることが可能な場合もありますので会計ソフトに強いこだわりがある場合は確認してください。
まとめ
今回紹介してきた以外にも非常に多くの会計ソフトが各社からリリースされています。会計ソフトは業種や会社の規模、後は経理担当者の簿記知識などにより相性の良し悪しがあります。相性の悪い会計ソフトを選択してしまうと事務効率の悪化を招きかねません。会計ソフトの導入や入替に際しては、無料お試し期間を利用するなどして自社にとって最適な会計ソフトを選択することができるよう十分に比較検討して下さい。