創業補助金の活用の仕方 特徴と申請方法

創業補助金の活用の仕方 特徴と申請方法

中小企業白書によると、創業5年後に存続している会社は80%、10年後で70%です。

実に、3分の1の会社が10年以内に姿を消しているわけです(2011年版)。

その最大の原因は、資金繰りがうまくいかないことにあります。

創業期から成長初期にかけて最大の課題は資金繰り

創業当初は実績も信頼も少なく、なかなか売上が上がりません。

しかも、家賃や給与などの支払いが定期的にある一方、入金は翌月末になるなど、資金面で苦労しがちです。

成長タイプ別に見た、各成長段階で直面している課題
中小企業白書より

2017年版の中小企業白書を見ても、創業期の課題として最も多いのが「資金調達」となっています。

これは2番目の「家族の理解・協力」よりも約20%多い値です。

創業期から成長期になると、多少下がりますが、一番の課題が資金調達であることに変わりありません。

こうした創業期の資金繰りを助けてくれる制度。それが創業補助金です。

創業一年目限定で、必要経費を一部補助してくれる創業補助金

創業補助金は、正式名称が毎年変わります。

平成30年は「地域創造的起業補助金」、令和元年は「創業支援等事業者補助金」と言いました。

補助金の目的も例年少しずつ異なりますが、いずれも創業者の資金繰りを支援するものです。

ちなみに平成30年は「新たな需要や雇用の創出等を促し、我が国経済を活性化させることを目的に、新たに創業する者に対して創業に要する経費の一部を助成」(地域創造的起業補助金のホームページより)となっていました。

ここでは、例年ほぼ変わらない基本的な仕組みについてご紹介します。

1.必要経費の一部が補助される

創業補助金は、創業期に必要な経費の一部を補助してくれます。

その補助してくれる割合を「補助率」と言います。

補助率は毎年変わる可能性があり、平成30年は2分の1でしたが、令和元年は3分の2でした。

対象となる経費

人件費、地代・家賃、広告宣伝費(旅費を含む)、調査費、外注費、委託費など。

設備費については、その事業でのみ使われるものが対象となります。

また、店舗・事務所の開設に伴う外装工事・内装工事費用、機械装置・工具等の調達費用のほか、原材料費、特許権等の取得にからむ弁理士費用等の特許関連費も対象になります。

対象とならない経費

水道光熱費、通信費、交際費など。

また設備費のうち、机や椅子といった、どのような事業をする上でも最低限必要とされるものについても対象外です。

法人の場合は代表者及び役員の人件費、個人事業主の場合は本人と生計を一にする三親等以内の親族の人件費等も対象外になります。

また、従業員であっても補助事業の交付決定日より前に雇用している者に、交付決定日より前に支払った給与等も対象外です。

対象外の経費は、かなり細かく決められています。募集要項をよく読むようにしましょう。

補助限度額

これも年によって変わります。

平成30年(地域創造的起業補助金)の場合

外部資金調達がある場合50万円以上、200万円以内
外部資金調達が無い場合50万円以上、100万円以内

令和元年(創業支援等事業者補助金)の場合

50万円以上、1,000万円以内

募集対象者と期間

募集対象者も例年、少しずつ異なります。

平成30年の場合、以下の3つの条件がありました。

  1. 公募開始日以降に創業する者
  2. 補助事業期間完了日までに個人開業または会社・企業組合・協業組合・特定非営利活動法人の設立を行い、その代表になる者
  3. 事業実施完了日までに、新たに従業員を1名以上雇い入れる者

これは補助金の目的が「新たな需要や雇用の創出等を促し」となっていることと関係があります。

令和元年は「特定創業支援等事業(継続的な支援で、経営・財務・人材育成・販路開拓の知識が全て身につく事業)及び、創業機運醸成事業(創業無関心者に対し、創業に関する普及啓発を行う事業)」となっていました。

補助事業の期間も年ごとに異なります。平成30年は交付決定日から同年12月31日まででしたが、令和元年のものは翌令和2年3月31日までになっていました。

補助金の支払いはすぐに入金があるわけではなく、原則として事業終了後に資金使途に

ついて検査があり、その後に入金という流れになります。

3.申請期間や対象地域が限られている

いつでも申請できるわけではなく、毎年春頃に1ヶ月ほど募集期間が設けられています。

令和元年の募集期間は5月15日から6月14日でした。

いつ募集が行われるかは中小企業庁のホームページや各地方自治体のホームページでの告知を見るようにしましょう。

また以下のホームページで助成金に関する情報が調べられます。

また、対象となる市区町村が限定されている場合もあります。

そういう場合は、認定市区町村での創業のみが対象となります。

過去の認定市区町村(PDF)

実際にはほとんどの市区町村が対象となっており、あまり気にする必要はないかと思います。

なお、年度ごとの詳細はこちらをご確認下さい。

申請から受給までの流れ

創業補助金の募集開始

令和元年は5月15日から募集が始まりました。毎年、ホームページのアドレスが変わるので、間違えないように注意しましょう。

公募説明会に参加する

必須ではありませんが、できれば出席された方がいいでしょう。

令和元年の場合は関東(5月16日:さいたま市)を皮切りに、中部(5月29日:名古屋市)まで全国10カ所で開催されました。

時間は1時間30分程度です。申し込みは、平成30年は当日受付制でしたが、令和元年はメールでの事前申し込み制(先着・人数限定)になりました。

説明会に参加される場合は、早めにホームページを見るようにしましょう。

応募

必要書類に記入して郵送またはメールで事務局に送ります。

郵送の場合、応募期間が電子メールより短いので注意が必要です。また、片面印刷でホチキス止めをしないといった決まりがあります。

募集要項をよく読んで準備しましょう。

必要書類は、以下になります。

  • 事業計画書
  • 認定市区町村又は認定連携創業支援事業者による特定創業支援事業に係わる確認書
  • 補足説明資料
  • 住民票
  • 開業届の写し(個人事業主の場合)
  • 履歴事項全部証明書(法人の場合。当該補助金を申請する法人以外の法人の役員に就任している場合は、その会社の履歴事項全部証明書も必要です)
  • 金融機関からの支援を受けていることの確認書(外部資金の調達が見込まれる場合)

審査

審査は募集対象者に適合しているかを審査する「資格審査」と、事業計画書等をもとに審査する「書面審査」の2段階に分かれます。

なお、書面審査は

  1. 事業の独創性、
  2. 事業の実現可能性、
  3. 事業の収益性、
  4. 事業の継続性、
  5. 外部資金調達

の5つのポイントで審査されます。

審査に受かるポイント

「新たな需要や雇用の創出等を促し」(平成30年)といった、その年の創業補助金のコンセプトをよく理解し、それに合った事業計画書にすることが大切です。

その上で(1)事業の独創性について述べます。できるだけ詳しく書くことが望ましいですが、提案のポイントを絞ることも併せて必要です。

また実現可能性については、個別の技術や数字を使って具体的に記述することが大切です。

なお、審査には1~2ヶ月ほどかかります。

採択と交付決定

応募者全員に文書で採否の結果が通知されます。また、中小企業庁や事務局のホームページで法人名や採択テーマ名等が公表されます。

採択された場合は補助金交付申請書を提出し、交付の手続きを進めます。

補助事業期間中

創業が条件の場合は、速やかに創業し、関連書類を提出します。

また、事務局から指定された日までの事業遂行状況を、30日以内に報告書を提出する必要があります。

事業完了と補助金の交付

補助事業完了後30日以内に実績報告書を提出します。

補助金は、報告書の内容を事務局で確認し、補助金額を確定した後に支払われます。

実績報告書の提出後2~3ヶ月程度かかります。

創業補助金のメリットとデメリット

メリット

創業補助金の最大のメリットは、原則返還不要な点です。

デメリット

申請に手間がかかる点と、補助金が後払いになる点でしょう。

令和元年の場合、申請(令和元年5月)から受給(令和2年3月末の終了から2~3ヶ月)まで、ほぼ1年もあります。

本来、資金繰りのために補助金を受けるわけですが、その補助金の支給が遅いとなると、今すぐに

資金が必要という場合、創業補助金では対応できません。

補助金は文字通り補助的なものと位置づけ、補助金が無くても資金を回せるようにしておくことが大切です。