企業経営において非常に重要な問題である節税について具体例と共に開設します。必見です。

節税対策

節税について経営者の大多数が関心を持っています。
それは、企業経営において節税は非常に重要な問題であるためです。
会社の目的は、利益を追求することであるとも言えますが、業績がいい年もあればマイナスに陥る年もあり、資金的・財務的に脆弱な会社は最終的には倒産します。
企業における節税の目的として、税金をコストとして捉え強い財務体質を作ること、さらに成長し続けることにより経営者・従業員・取引先・株主などに資金を還元して、企業関係者と共に成長することにであると私は考えます。
しかし、節税対策をあまりにも重視しすぎて、企業経営が二の次になるというのは本末転倒ですので、節税は安定経営のための必要な作業の一つであるという位置付けと言えます。
また、税務の実務上において節税と脱税若しくは租税回避との境について、曖昧なことが多々あります。節税はあくまで合法ですが、脱税は違法であるため、過度の節税は税務署から見ると脱税又は租税回避という認識になる場合もありますので、リスクを検討しながら節税対策をする必要があります。
節税対策は、企業が厳しい競争の中で生き残るために、強固な財務体質を築き上げる一つのファクターとして大切です。
下記に節税対策の一部をご紹介致しましたが、節税対策には資金的なリスク並びに税務署と見解の相違によるリスクが伴うことが御座いますので、税理士等の専門家と意見を交えながら行うことがお薦めです。

節税対策の分類

会社の税金は、主に法人税、法人住民税、事業税が掛かりますが、いずれも会社の利益をベースに税金が課税されますので、節税対策を実施するに際して、会社の利益をいかに圧縮するかが鍵となってきます。

節税対策は主に四類型に分類できます。

  • 利益の繰延べ    税金の支払いを来期に繰延べる
  • 半永久的利益対策  同じ会計処理を続ける限り半永久的に節税できる
  • 税金の免除     税金そのものを半永久的に免除する
  • 先行投資による節税 設備投資など将来へ先行投資をする対策

節税対策の基本は、収益を少なくする、又は費用を多くすることにより利益の圧縮をすることですが、税金自体を免除する対策など、いろいろな方法をフル活用して節税をすることが大切です。

節税対策の具体策

航空機・船舶などのオペレーティングリースで税の繰延べ
法人契約の生命保険で節税
取得価額30万円以下の減価償却資産
運転免許取得費用の取り扱い
従業員の食事
社会保険料の未払計上で節税
出張日当で節税
締め日後の給与で節税
少人数私募債を発行して節税
逓増定期保険を使用した法人→個人への資産移転での節税
小規模企業共済掛金を使った節税
契約書の印紙の節約
社員旅行を全額経費にするには…
交際費と会議費
固定資産の評価損
決算期変更で節税
儲かっている社長がベンツを買うのはなぜ
雇用促進税制
中小企業防止共済で節税
健康診断は全社員で受診しましょう
借り上げ社宅の利用で節税
通勤手当の非課税
未払賞与を計上して節税
決算期変更で節税

1.航空機・船舶などのオペレーティングリースで税の繰延べ

オペレーティングリースとは、主にリース会社が販売しており、減価償却を使った方法で利益を圧縮することが出来る商品です。
リース会社が法人から出資を募り、組合を作ります。
その出資を募り集まった資金と金融機関から借入をして、航空機・船舶・コンテナ・ヘリコプターなど、耐用年数の短い資産を共同で購入し、それを航空会社や船舶会社にリースします。
出資者は、出資額に応じた減価償却費を計上して、リース終了時の売却益により収益が発生します。
この節税対策のメリットは、出資した1年目に7割〜10割、2年目に残りの償却費を経費で落とすことが可能です。
なお、出資金額は、通常1000万から3000万円単位です。
すなわち、当該オペレーティングリースは、リース代金を出資して、リース事業・当該物件の売却から生じる損益と配当を受け取ることによって、現在の利益を将来に繰延べることが可能な仕組みです。

オペレーティングリースの仕組み

①投資家である当該法人は、匿名組合に出資する
②出資金と金融機関からの借入で、メーカーからリース物件となる航空機・船舶を購入する ③購入した航空機・船舶を、ユーザーとなる航空・船舶会社にリースする
④匿名組合は、定期的な決算にて事業の損益を確定させる。航空機・船舶等の減価償却  費と金融機関への支払利息が、匿名組合の費用となる
⑤リース期間終了後、リース物件をユーザーである航空・船舶会社に売却益して、匿名組合は収入を得る
⑥リース料+物件売却代金から借入金を控除したものが、剰余金として出資比率に応じて投資家に現金分配される。

メリット

  • 初年度の費用計上額は出資額の70〜100%
  • 突発的な利益対策が可能
  • 大きい金額の費用計上のニーズに対応

デメリット

  • リース会社や船舶・航空会社が倒産する可能でがある
  • 外貨建ての商品が多いため為替リスクがある
  • 元本及び収益が保証されていない

平成16年10月28日名古屋地裁判決
航空機リースによる節税スキームについて、野村証券の子会社である、野村バブコックアンドブラウンが売り出した節税スキームが問題になった事案です。
同リース事業について「税逃れ」とする国税局の主張を退け、名古屋地裁の加藤幸雄裁判長は「税制上のメリットを考慮して選択することは何ら不当ではない」として、納税者が勝訴しています。

2.少人数私募債を発行して節税

少人数私募債とは、銀行などの融資とは違い、社債を発行して役職者や縁故者などから直接資金を調達する方法です。株式会社では、取締役会の決議を経て一定の手続きをすることで短期間に少人数私募債を発行することが出来ます。
また、発行金額・利息・償還方法をある程度自由に決まることが可能です。
なお、発行方法は比較的簡単で、取締役会を開いて、賛成の決議を過半数とれば可能です。

少人数私募債発行の手続き

  1. 取締役会の決議
  2. 社債内容の決定
  3. 募集要項の取決め
  4. 社債申し込み証の発行
  5. 募集決定通知
  6. 入金確認
  7. 社債原簿の作成

少人数私募債のメリットは、株式の配当とは違い、利息が会社の損益計算上経費となります。また、通常社長から会社への貸付金の利息は雑所得となり、個人において他の所得と合算します。収入が多い社長が利息を受け取った場合、個人の収入に対して50%の税金が課税されます。
しかし、少人数私募債で得た利息は源泉分離課税ですので、年収が多額であっても20%(所得税15% 住民税5%)の税金のみで、高額な所得者に対しては節税のメリットがあります。

少人数私募債発行の要件

  • 株式会社であること
  • 社債購入者は、50名未満にすること
  • 社債の一口の最低金額は発行総額の1/50超であること
  • 募集の対象者は、経営者やその親族・社員・取引先などの縁故者
  • 社債発行総額が1億円未満であれば届出・担保が不要
  • 社債購入者に金融機関などのプロがいないこと

役員報酬を増やした場合、それに応じた高い税率で税金を取られますが、自社が発行する私募債を経営者自身で購入すれば税金は20%のみで済みます。
例えば、社債を購入して会社に3000万円を預け年5%の利息を受け取った場合、受け取る利息は1年で150万円となり5年では750万円となります。そこから20%の税金を差し引いても600万が手元に残ります。
さらに、直接金融の方法により資金が調達が出来たということは、当該企業に対して社会的な信用があるというの裏づけになります。
すなわち、少人数私募債発行により、銀行や取引先などからの評価も高まる場合があります。

3.儲かっている社長がベンツを買うのはなぜ

減価償却の計算において、耐用年数が短くなればなるほど、費用として計上できる減価償却費が多くなり、税金において有利となります。
耐用年数は、各資産ごとに税法で定められておりますが、その耐用年数を勝手に短くして減価償却費を計算することは出来ませんが、中古の資産を購入すると耐用年数が短くなり節税になります。
すなわち、耐用年数は、新品の減価償却資産に対して適用されますが、中古の減価償却資産を購入した場合は、通常の耐用年数とは異なります。
それは、中古固定資産の耐用年数は、税法において計算式が定められているためです。

例 3年落ちの中古車を取得した場合の耐用年数の計算方法

新車の耐用年数6年 - 経過年数3年 + 経過年数3年 × 20% = 3.6年
1年未満切捨てのため、中古車の耐用年数は3年となります。

購入金額1000万で中古3年落ちのベンツを購入して、当期において12ヶ月間使用した場合は、約830万円が今年度の減価償却費となり、多額の経費が計上できることが分かります。
それに比べて、新車で車を購入した場合は、耐用年数が6年となり、当期の減価償却費は約410となるために、中古の車を購入したときと比べて約420万円の開きがあります。
利益が出る場合は多額の費用を計上することによって、利益の圧縮が可能となります。
さらに、このような高級車は、会社の資金需要が不足した際に売却も可能なものであれば、資金繰りの面からも助かります。

4.法人契約の生命保険で節税

利益が大きく見込まれそう。そんなときは保険を使った節税対策を考えてみてはいかがでしょうか。
生命保険には、法人契約と個人契約がありますが、法人契約の方が節税となります。
個人の契約では、生命保険控除が最大で5万ですが、法人契約の場合、その保険料は会社の経費となり、節税となります。

(1) 全額経費となる終身型のがん保険

終身型のがん保険は、保障も貯蓄性もあり、全額損金できる生命保険です。
終身であるため、保障も保険料の支払いも死ぬまでとなります。

  • 支払額が全額経費となる
  • 解約返戻金という形で簿外資産が貯蓄されます。
  • 解約返戻金を活用すれば、高額な退職金の原資となる
  • 取引先の倒産など損失の穴埋めにもなる。資金調達が可能

例えば、全額損金計上できるがん保険は、保険料全額が損金となるため、例えば、会社の利益が300万円出そうな場合、保険料を300万円支払うと利益が0円となります。年300万円の保険料を10年間払うと、支払い総額が3000万円となります。保険の種類により異なりますが、この種の保険の解約返戻金は約85%ですので、10年後に解約した場合2,550万円が戻ってきます。

(2) 半額が経費となる逓増定期保険

この保険の特長は、高額な「解約返戻金」が支払われることです。
逓増定期保険は掛け捨てであり、これは保険期間中、ある一定の時期に解約返戻金が最高額にまで加算され、またある時期を境に減り続け、保険期間の満了後においては保険金は支払われません。
すなわち、逓増定期保険は、高額な解約返戻金を有利に活用して、課税の繰り延べを行うことが出来る生命保険です。
この、逓増定期保険の保険料は、多くの場合、半分損金に算入されます。
保険料を半額費用計上しているので、その分法人税が少なくなり、解約返戻金が戻るまでの期間において、課税の繰延べが出来ます。
また、逓増定期保険には契約者貸付制度があり、解約返戻金の範囲内において低利率により貸付を受けることが可能です。
半額損金の生命保険の場合、例えば年間保険料が300万円のうち、半分が経費計上出来るため、残りの半分である150万円が税金の対象となります。
法人税の実効税率は約41%ですので、税額は1年で61.5(利益150万×41%)万円です。
さらに、10年間に払う生命保険料総額は3000万円、税金の総額は615万円(年61.5万×10年間)となりますので、10年間で支払う生命保険料と税金総額は合計で3615万円です。
この種の生命保険金の解約返礼率は、約95%ですので10年後には保険料として2,850万円戻ってくるため、回収率は約78%(2,850万円/3,615万円)となります。

5.逓増定期保険を使用した法人→個人への資産移転での節税

逓増定期保険において、解約返戻金に低解約の期間を設けている商品があります。
そこで、まずは会社にて掛捨ての逓増定期保険に契約して、支払保険料の1/2を費用として計上します。

例:年払保険料100万 保険金額1,000万

1年目 解約返戻率0%(返戻金0円)    2年目 解約返戻率8%(返戻金16万)
3年目 解約返戻率20%(返戻金60万) → 4年目 解約返戻率95%(返戻金380万)

3年目にはまだ解約返戻金(返戻率20%)が低い段階であり、その3年目において名義を会社から個人へ変更します。生命保険契約を会社から個人に移したため、解約返戻金相当額である60万円で個人に売却することになります。
次に、個人は会社から買取りをした、この生命保険の保険料を4年目の1回だけ(100万)支払います。
個人は、会社から買取をした際の60万円と4年目の生命保険料100万円の合計160万円の支払いをするだけで、解約返戻率が高い4年目に生命保険を解約したことにより、380万円の現金が入ってきます。
しかも、この保険料は一時所得となるため、税金上も非常に有利となります。

6.雇用促進税制

平成23年度の税制改正にて、雇用の維持・促進を図る目的として雇用促進税制が創設されました。
雇用促進税制とは、青色申告書を提出する法人及び個人事業者が、前期末より一定以上の従業員が増加した場合には、一人当たり20万円の税額控除が受けられる制度です。

適用要件として下記の全てに該当することが必要です。

  • 前年度末日と当年度末日を比較して、雇用増加割合が10%以上増加していること
  • 雇用増加人数が2人以上(大企業は5人以上)であること
  • 前年度及び今年度に事業主都合による離職者がいないこと
  • 人件費が一定以上増加していること
  • 風俗営業等を行っていないこと

手続きは下記の通りです。

  1. 事業年度開始後2ヶ月以内に、雇用促進計画をハローワークに提出
  2. 事業年度終了後2ヶ月以内に、雇用促進計画に達成した旨の記載をハローワークに提出
  3. 確定申告書に確認を受けた雇用促進計画の写しの添付が必要

7.取得価額30万円以下の減価償却資産

通常、10万円以上の固定資産を購入した場合、会社は資産として計上する必要があり、耐用年数に応じて減価償却費を計上しなくてはなりません。
しかし、中小企業の特例として30万円未満の固定資産を購入した場合、また別の処理方法があります。
中小企業者が、30万円未満の減価償却資産を平成15年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得して、事業の用に供した場合には、その取得価額を全額経費処理することができます。

この特例の対象は、下記の通りです。

  1. 青色申告法人
  2. 資本金の額又は出資金の額が1億円以下
  3. 常時使用する従業員の数が1,000人以下

30万円未満の資産は全額を損金算入するのが最も有利であり、期末に利益が出そうな場合は30万円未満の固定資産を相当数購入することにより、節税が可能です。
さらに、この方法は個々の資産ごとに選択出来ますので、会社の利益を見ながら、経費に入れる額と固定資産に計上する額を調整することが出来ます。
なお、この取得価額が30万円未満の減価償却資産を全額経費処理出来る各事業年度における合計額は、年300万円までです。

8.小規模企業共済掛金を使った節税

小規模企業共済とは、国が全額を出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営をしています。
この小規模企業共済は、小規模企業の個人事業主または会社等の役員が、事業を廃止した場合や役員を退職した場合などに、この共済金を受け取ることが出来る制度です。
この制度は、ある意味で経営者に対する退職金制度といえます。
この小規模企業共済制度は、個人で加入するため一見して会社の節税には関係ないように思えますが、この共済制度は会社と個人両方の節税となります。
つまり、会社ではこの小規模企業共済の掛け金分を、役員報酬上乗せします。それにより、会社の経費は増えることになり利益は減少することにより、法人税が減少します。
また、役員報酬を増やしたため役員の収入は増加しますが、小規模企業共済の掛け金は全額所得控除できるために、所得税も減少します。
すなわち、法人税と所得税の両方を減少させることができ、さらに退職金の上乗せが出来ます。

9.中小企業防止共済で節税

中小企業倒産防止共済とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している、取引先が倒産したときに貸付を受けられる制度です。
貸付の限度額は、従来の320万円から800万円に引き上げられ、月額の掛金における上限額も月8万円から月20万円になり、これにより節税として利用できる金額上限が増えました。
この中小企業倒産防止共済の掛金は、支払い時に全額が損金となり、また解約した時点で一定額の解約手当金が戻って来ます。
この制度の解約は自由で、解約した時点で当該解約手当金は収入となり、契約から40ヶ月以上の解約であれば掛け金の100%が返金されます。
この商品は、支払額の全額が損金に算入可能であり、一定期間後の解約であれば100%返金されるため、ある種の積み立て預金とも言えます。
全額が損金になる生命保険として考えた場合、解約返戻率が100%になるものは他にありませんので、節税商品としてはとてもお勧めです。

10.運転免許取得費用の取り扱い

運転免許などは、その取得した人が会社を退社しても個人として使用出来るものなので、その取得費用を会社にて負担すると給与とみなされるため源泉所得税の対象となります。
ただし、例外として「その資格が、職務に必要なものであれば非課税給与」として扱うことも認められています。

  1. 使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させるための費用
  2. 免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用
  3. 大学等における聴講費用に充てるものとして支給する費用金品

これらが非課税として認められるのは「その社員の職務に直接必要な資格」であるために、仮に運送業の会社であっても事務職員などに対する自動車運転免許の取得費用などについては認められません。

11.契約書の印紙の節約

契約書には印紙税がかかる代表的な文書ですが、当事者間の契約の成立を証明する目的で作成するため、通常は一つの契約につき、当事者の数の契約書が作成されます。
この印紙税とは、作成された文書に対して課税される税金であるため、作成された契約書が課税文書であれば、作成した契約書全てに印紙を貼らなければなりません。
しかし、作成された契約書をコピーしたものは、署名や押印または正本・原本と相違ないことの証明が無い限り、契約書には該当しませんので、その契約書の控えをコピーで済ませることが出来れば、印紙を貼る必要がありません。

12.健康診断は全社員で受診しましょう

健康診断の費用は、本来個人が負担すべきものであって、会社がその費用を負担すると社員の給与とみなされます。
ただし、次の要件を満たせば、健康診断の費用を会社の福利厚生費として処理することができます。

  1. 対象者を全社員とする。(一定の年齢以上の社員に限定しても構わない)
  2. 診断内容が健康管理上の必要によるもので、常識の範囲内であること。
    ただし、日数は2,3日以内で、費用が高額でないこと。
  3. 費用は会社が直接金融機関に支払う。会社が社員に現金を渡し、社員に支払わせてはいけない。

13.従業員の食事

会社が従業員に食事を支給する場合、会社負担額が月額3500円以下で、従業員が食事代の50%以上を負担すれば福利厚生費として処理できます。

この場合の食事代とは、次の金額で評価します。

  1. 会社が調理して支給する食事については、その食事の材料費に相当する金額
  2. 会社が購入して支給する食事については、その食事の購入価格に相当する金額

また、残業や宿直時に食事を支給する場合は、上記の条件の制限なく、福利厚生費として処理できます。
ただし、いずれの場合も、食事代を現金で渡すと給与とみなされるため、食事は現物で支給するようにしましょう。

14.社員旅行を全額経費にするには…

社員旅行の費用は、原則として2つの条件を満たせば、福利厚生費として処理することができます。

  1. 旅行期間は4泊5日以内であること。
    海外旅行の場合は、目的地での滞在日数を4泊5日とし、飛行機内等の1泊は含めない。
  2. 旅行に参加する従業員等の人数が50%以上であること。
    (支店別の旅行ではその支店の従業員の50%以上。)

ただし、この条件を満たしていても、次の場合は給与や交際費とみなされることがあるので注意が必要です。

  • 旅行費用が高額である
  • 自己都合での不参加者に現金を支給する。

この場合、旅行参加者にも現金相当額の給与が支われたものとみなされ、所得税がかかります。

  • 豪華なホテルでの宿泊
  • 高級レストランでの食事
  • 常識を超えた遊興

15.借り上げ社宅の利用で節税

役員や従業員の自宅の賃貸契約を会社と大家で行い、会社にて借り上げて社宅とすることにより、家賃を会社の経費にすることが出来ます。
ただし、当該物件における家賃の全額を会社の経費として負担すると、経済的利益の供与があったとして、給与が課税されます。
この給与課税を回避するためには、社宅を借りている役員や従業員から一定額の家賃を徴収する必要があります。

例:年収600万円 社会保険料年74万円 所得税・住民税年50万円  家賃月14万円

当該社員が住んでいる賃貸の契約を個人から会社に変え、家賃総額月14万の内から本人負担を4万円・会社負担を10万円として、併せて会社からの給与額を月10万円減額します。
会社としては家賃負担が月10万円増えましたが、当該社員に対する給与額が月10万円減少したため、資金的には影響がありません。また同様に、社員側の個人においても給与額が月10万円減少しましたが、その分家賃を会社で負担してもらっているため、この点において影響はありません。
これに伴い、従業員の給与が月10万円減少したために、社会保険料が年で約14万円安くなり、所得税・住民税も年約15万円減少することになり、社会保険料に加えて税金においても節税となります。
さらに、会社の社会保険料負担額も年14万円程度安くなります。

16.社会保険料の未払計上で節税

会社が加入する社会保険料(健康保険と厚生年金)は、当月分を給料天引きし、翌月末に会社負担分と併せて口座から引き落とされます。

例えば、10月決算法人の場合

10月支給分の給料から差し引かれた社会保険料は、会社負担分と併せて11月末または12月初めに引き落とされます。
この際、10月末(期末)に会社負担分を未払計上すれば、10月の経費となります。
未払計上は帳簿上の手続きの為、年金事務所との煩わしい手続きは一切不要です。

17.交際費と会議費

通常、忘年会・新年会などは会社が費用を負担し「福利厚生費」として処理します。
しかし、下記の要件を満たさないと「交際費」として課税されます。

  1. その費用が一般常識の範囲内であること。
  2. 全従業員を対象としていること。
  3. 一次会のみ会社負担としていること。

裏を返せば

  1. 高額な忘年会
  2. 役員のみなど、参加者を限定していること。
  3. 二次会、三次会まで会社負担としていること。

この場合「交際費」として課税とされ、支出額の一部が経費となりません。

打ち合わせの飲食代が、交際費となるか若しくは会議費となるかで納税額に影響します。
「会議費」は下記の要件が必要です。

  1. 飲食代の領収書に参加者の名前や会議内容を記載すること。
  2. 会議を行うのにふさわしい店であること。
  3. 会議を行うに妥当な金額であること。

また、社外の人と飲食をする場合に限り、下記の要件を満たすことにより「交際費」とならず、「会議費」とすることが可能です。

  1. 社外の人が参加すること
  2. 一人5,000円以下であること
  3. 次の事項を記載した書類を保存すること
  • 飲食等の年月日
  • 参加者の氏名又は名称及びその関係
  • 参加者の人数
  • 金額及び店舗名とその所在地

(例)飲食代が20,000円で取引先3名、自社3名で計6名参加した場合

20,000円÷6名=3,333円
一人5,000円以下の為、会議費となります。

18.通勤手当の非課税

通勤手当は一定限度額までは税金がかからないのは、ご承知だと思います。しかし、そのことを上手に利用していない会社もあるようです。
たとえば社長への通勤手当はどうでしょう。
通勤手当の非課税枠というのは、社長やその他の役員にも適用されます。
例えば、通勤距離で5kmを自家用車で通勤している場合、社長であっても月4,100円までは通勤手当を支払っても非課税となります。
また、通勤距離が2キロメートル以上10キロメートル未満の人の場合、徒歩や自転車で通勤したとしても、月4,100円までの通勤手当を非課税で支給することができます。

19.出張日当で節税

会社の業務で出張をする場合は、出張日当を支払い節税することができます。
会社において、出張に係る旅費交通費の支払いを費用にするには、実際に支払いをした電車代・宿泊料などについて、領収書を添付して精算することが一般的です。
しかし、出張に伴う宿泊代・昼食代など個々の出費について、実費精算をする方法とは別に、会社で出張旅費規程を作成して、合理的に決められた出張日当の支払いをすることによりり、税金の計算上において役員や従業員の給与に課税しないことが可能です。

メリットとして

  1. 出張に伴う日当は、個人の所得として合算されない。
  2. 出張日当は、消費税の課税対象となる。

この出張手当における支払方法には、一日の宿泊料を込みで金額を支給する方法や宿泊料を別途支給する方法があります。
仮に、宿泊料とは別途に出張日当が支給される場合の金額が3,500円である際は、当該3,500円が会社での経費となります。
さらに、日当3,500円を受け取った役員・従業員の側は、仮に出張中における昼食代が700円のみ使用した場合も、出張日当3,500円と昼食代700円の差額について、税金が課税されることは御座いません。
この出張日当は、もらう側の従業員と会社の両方で節税となります。
出張日当は会社経営者・取締役などにも適用可能です。
出張日当を支給するには、出張旅費規程を作成して、その中に100km程度の長距離出張に当該日当を支給する旨を記載する必要があります。
また、あまりにも一般的な金額とかけ離れた日当金額を支給してしますと、給与として課税される場合もありますので注意が必要です。

20.固定資産の評価損

固定資産は減価償却を通じて年々費用化していくのが原則ですが、以下の場合は評価損を計上することが可能です。

  1. 災害や事故により著しく損傷した場合
  2. 1年以上にわたり遊休状態にある場合
  3. 本来の用途に使用できない為、他の用途に使用された場合
  4. 所在する場所の状況が著しく変化した場合

ただし、下記のような場合は評価損は損金の額には算入されません。

  1. 過度の使用・修理の不十分等により著しく損耗している場合
  2. 償却を行わなかったため償却不足額が生じている場合
  3. 取得価額がその取得時の事情等により同種の資産の価額に比べ高い場合
  4. 機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化している場合

1年以上遊ばせている資産がないか等、評価損が計上できる固定資産がないかどうか調査してみてはいかがでしょうか。

21.未払賞与を計上して節税

決算期末において、業績が予想よりも良く利益が多く出る場合があります。その場合に、利益が出たのは従業員の日頃の努力の御陰でもあるために、その対価として決算賞与を計上して、費用を増やして利益を圧縮することができます。

下記の3つの要件を満たした場合、未払賞与を計上できます。

  1. 決算期末日までに、支給額を各人全てに通知していること
  2. 通知した金額を通知した全ての支給対象者に対して、決算期末から1ヶ月以内に支払っていること
  3. その支給額を、通知した事業年度において経費処理していること

決算日末日から1ヶ月以内に、支給の通知をした全員に賞与の支払いをすることが大切です。

22.締め日後の給与で節税

会社において、決算月における締め日後の給与も費用計上することが出来ます。
仮に毎月の給与締め日が20日で、月末支払いである場合、21日から31日までの10日間は従業員も仕事をしています。その10日間分の給与を未払金として費用計上することにより、仮に月の給与が一人60万の場合は10日分に該当する20万円を費用計上することが出来ます。
さらに、従業員が10人であるとすれば、20万×10人=200万円が経費になります。

23.決算期変更で節税

特定の一時期に多額の利益が計上されることがあらかじめ分かっている場合、決算期を変更することによって、節税をすることが出来ます。
仮に、決算月が9月の法人で、7月に多くの利益が出ることがあらかじめ判明している場合において、6月に決算期を変更して、10月から6月までの9ヶ月間で決算を行います。
この決算期の変更を行うことによって、翌期からは6月決算からになるため、7月から1年間をかけてその利益に対する節税をすることが出来るために、時間的な余裕があります。

決算期を変更するための手続きとしては下記の通りです。

  1. 株主総会を開催する
  2. 定款を変更する
  3. 決算月変更の内容を税務署長に届け出る

24.決算期変更で節税

決算直前にて、今期はある程度の利益金額が予想されたるのであれば、下記の条件に基づき、前もって家賃等の支払いを年払いをすることにより、家賃の支払い時点で会社の経費とすることができます。

  1. 一定の契約に基づいて継続的に役務提供を受けるために支出する費用
  2. 毎期継続して行う
  3. 提供を受ける期間は1年以内

法人税において、家賃や保険料など、1年以内に役務の提供を受けるものに対して、前もって1年分の支払いをした場合、支払い時点で損金とすることが認められております。
ただし、家賃の支払いを年払いにして、当該短期前払費用の適用を受けようとするためには、大家さんとの賃貸借契約書を、年払いに変更する必要があります。
例えば、12月決算の法人であれば、11月までは通常の家賃を毎月支払う契約で、翌月の12月からは賃貸借契約書を変更して、年払いの契約書に変えることにより短期前払費用の適用が可能となります。