個人事業主のための節税ポイント

よい経費と悪い経費

当たり前のことかもしれませんが、皆さんはどうやって、税金(税額)が決まるかご存知ですか?
個人事業主の場合はその年1年間に得た収入(売上)から、支出金額(経費)を引いた残りに、所得控除(有名なところでは「基礎控除」や「配偶者控除」など)をさらに引いて、その残りに税率をかければ、その年の税額が出ます。
つまり、単純に考えれば、経費が増えれば、税額も減ります。

ここで気を付けていただきたいのは、ただいたずらに経費を増やせばよいというものではありません。
まず、それが事業を行うにあたり必要な経費であるかどうかがポイントになります。
すぐに売上に直結していなくても、今後事業を行う上で必要なものであれば、それは経費となります。

また、生活費とその経費が混ざっていないかも大事なことです。
自宅を事務所として仕事に使っていたり、自分の携帯電話で、仕事の電話もかければ、プライベートな電話も掛けることでしょう。
これらにかかる費用は「家事按分」と呼ばれる一定の割合を決めることで、経費にすることが出来ます。

そして、もう一つ大切なことは、ただお金を無駄に遣って経費を増やしていたのでは、確かに税額は減りますが、手元にもお金が残らないことになります。
節税は税金を必要以上に払わないようにすることが目的ですが、それと同時に事業で利益を出し、最低限の税金を払うことで、結果的に手元にお金が残るようにすることも大事だと考えます。

青色申告と専従者給与

「青色申告」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
少々大変ですが、1年間の収支をキチンと会計方針に則ってまとめると(これを「複式簿記」といいます)、最低でも10万円、私たちにお任せいただければ65万円の控除を受けることが出来ます。
これは、お金を使っていないのに65万円分の経費が計上できることと同じになります。

現在、青色申告をしていない方でも、税務署からは既に記帳が義務付けられるようになっていることをご存知ですか?
これは今後ますます厳しくなることは間違いありません。
それを考えると今のうちから対策としてもキチンとお金の流れを管理し、青色申告の届出をすることで、その特典を受けてみませんか?

また、家族に仕事の補佐をお願いしている方も多いと思います。
青色申告の場合「青色事業専従者給与」の届けを出すことで、家族に適正な給与を支払い、それが経費になります。

他にも、青色申告にしますと、たまたま今年は赤字になってしまったという時もあると思います。
その場合は赤字の金額が3年間繰り越すことが出来ます。
つまり、今年100万円の赤字を出してしまった場合で、その翌年は利益が100万円出ても、所得金額は相殺されて0円になるのです。

少し大きな買い物をしたときに気を付けること(減価償却資産)

金額が10万円以上の買い物をしたときはなんでも費用になるわけではありません。
機械・工具やパソコンなどは、通常「減価償却資産」として、少しずつ何年かに分割で費用計上することになります(ご存知の方も多いと思いますが、これを「減価償却」といいます)。
ただし、この場合でも30万円未満の資産を購入した場合は全額費用計上することもできます。
これも、実は青色申告をしている方の特典のひとつです。

また、中古の車を買うのも一つの手です。「中小企業の社長さんがベンツに乗るのは節税対策だ」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
このまま真に受けてはほしくないのですが、ある程度は当たっています。中古車は上記と同じく減価償却資産になります。

しかし、新品と違って、中古の場合はその耐用年数(何年間かに分け、費用計上するのですが、その期間が決められていて、その期間をいいます)が新品より短くなります。つまり早く費用化することが出来ます。
乗用車は通常その耐用年数は6年のため4年経過した車なら2年(正確には何月に買ったかにもよりますが)となるため、1年目で全額費用にできる場合もあります。
さらに、ベンツはそのあとでもかなり高額で売れると聞いています。そのあとまた買換えるなんてことで節税対策をする方もいるようです。

法人化する

個人事業主の方は事業が順調に軌道に乗ってくると売上があがり、利益(=所得)に対して毎年の納税が生じます。

個人事業の利益(=所得)には「所得税及び住民税」が課されますが、所得税は利益が増加するにつれて税率が5%→45%まで少しずつ増えていきます。
利益が増加するにつれて段々と税率があがっていき、最終的には最高税率が55%となります。半分以上が税金で消えてしまう人もいるのです。

これに対して法人の利益に対しては「法人税」がかかります。この法人税は個人の所得税と違い利益に比例して増えることは少なく、ほぼ一定率となります。
法人税の税率は利益によって変わってきますが、だいたい20%~35%となっております。

つまり簡単にまとめますと個人事業主でかかる所得税率が法人税率よりも高くなれば、法人化した方が税金的に有利ということになり、その目安となる個人事業主の利益が500万円となります。また法人化することで個人事業では受けることができなかった様々な税務上の恩恵を受けることができるようになります。

小規模企業共済

小規模企業共済とは、会社員の方の退職金代わりになるものです。
個人事業主の場合、どんなに頑張ってお仕事を続けても、いざ引退しようとなるとその後のまとまったお金の用意も自分でしなければなりません。
そのために生まれたのが「小規模企業共済」です。「個人事業主のため退職金」とよばれている所以です。

一応、従業員の人数など多少の制約はありますが、「小規模」を対象としていますので個人事業主なら比較的誰でも加入できるようになっています。
掛金は月額1,000円から7万円までとなっています。

また、増額や減額もできるので(もちろん手続きは必要ですが)、その時の利益の具合により変えることもできます。
これは実際にお金を払うわけですから大事なところになると思います。そしてこの掛金は全額所得控除になります。
生命保険の保険料はいくら支払っても上限までしか控除を受けられないことを考えるとそのメリットの大きさを感じられることと思います。

また、1年分まとめて支払うことが出来ますので、12月に利益が出そうなことに気が付いて12月中にまとめて1年分支払えば、その分全額が所得控除になります。

さらに、受け取るときも退職金として一括で受け取るか、年金として分割で受け取るかを選ぶことが出来ます。そして、どちらで受け取っても税金上優遇されます。
他にも掛金の範囲内ですが貸付を受けることもできます。

なお、共済となっていますが、「保険」ではありませんので、入院給付などはありません。
また掛金を減額できるといいましたが、減額するとその分運用されないため、元本割れを起こすこともありますので、ご注意ください。
ただ、実際にはその分節税になっていますので、一概に損したともいえませんが・・・

中小企業倒産防止共済(経営セーフティーネット)

取引先が倒産したときにその影響で、連鎖倒産しないようにできた制度です。
法人の場合は中小企業限定でいろいろ制約がありますが、個人事業主の場合は大概加入できます。

掛金は月額5千円から20万円まで、5千円単位で決めることが出来ますが、最高800万円までしか積み立てることはできません。
そして、この掛金は全額費用に計上することができます。

加入後6か月以上経過して、実際取引先が倒産したときは、掛金総額の10倍までの貸付金を、無担保・無保証人・無利子で受けることができます。
ただしこの場合、掛金の10分の1の額が掛金から控除されてしまいますが・・・

なお、こちらも40か月未満で解約をすると元本割れをします。12ヶ月未満で解約すると掛け捨てになってしまいます。
また、解約すると解約手当金がもらえますが、これはその時の収益になります。赤字のタイミングで解約するなど、解約の時期もよく考えることをお勧めします。
掛金は減額も可能なので上手に使えば、節税対策の効果のあるよいものとなっています。

外注費にするか給与にするか

消費税を納めている方(原則適用限定)

人件費には消費税がかからないので、支払う消費税から控除ができません。
しかし、外注費にすれば、消費税がかかるので控除することができます。建設業などでよく「一人親方」と言われる方はこの場合の外注先になります。
そこで、従業員を外注先に切り替えることも節税の一つになります。

ただ、こちらは常に税務調査でも問題になる論点なので、契約内容等について詳細な取り決めが必要になります。
例えば、契約書をかわしているかどうか、他の人と入れ替わることが可能かどうか、指揮監督などを受けずとも、その人一人で仕事ができるかどうか、車は本人が持ち込んでいるのか、または、交通費まで支給していないかどうか、などなど・・・
色々細かい注意点がありますので、詳細は是非ご相談くださいませ。

出張があるのなら、是非「旅費規程」を作ろう

出張がある方は、「旅費規程」を作って出張手当を支給しましょう。
これは立派な経費として認められていますし、受け取った方は、給与の対象にはならないので、所得税や住民税がかかることもなく、メリットがとても高い節税法といえます。
この場合、その出張に係る交通費や宿泊費を実費で精算するとか、上限を設けるとか、事業主と他の社員との実情にあわせ金額を設定した方がよいとか、その業種にもよりますが、キチンと書面に残すことで、それなりの根拠が示せるようにしておきましょう。
この件も明確な基準がないため、税務調査で問題になることもありますので、是非ご相談ください。

仕事を紹介してくれた人に紹介手数料を払うならそれも経費になります

仕事を紹介してもらった時にその方に、謝礼や手数料を払うことも業種によってはよくあると聞きます。
個人事業主の場合、よくポケットマネーで処理することがあると聞きますが、これも立派な経費になります。

できることなら、この支払ったお金に関しあらかじめ契約など取り決めがあればよいのですが、個人事業主の場合中々そこまでは相手方に要求できませんよね。
この場合には払った相手方の名前、金額、日付、どの仕事に対する謝礼金か必ずキチンと書面にし、もし可能ならばあらかじめその「紹介された仕事の金額の何%にあたる金額を支払う。」みたいな、ちょっとした書付があるのもよいと思います。

要らなくなった機械、工具はこれを機会に処分しましょう

使っていない機械、工具、備品などは思い切って処分しましょう。このことで、「損失」が発生することもあります。つまり、経費が増えることになります。
倉庫の中をよく確認してみるのも大事ですよ。

回収できない売掛金が残ってはいませんか

帳簿上にずっと残っている売掛金はありませんか?これも放棄することで「貸倒損失」として処理することが出来る場合があります。
相手が行方知れずになったとか、倒産したとか、いくつかの要件はありますが、それに該当するならば、思い切って債権放棄をしてみるのも一つの手かもしれません。

国民年金基金

個人事業主は、国民年金に加入されていることと思います。この保険料ももちろん全額所得控除になります(健康保険料も同じです)。それにさらに上乗せするのが、「国民年金基金」です。
国民年金基金には、「地域型」と「職能型(従事している事業によるもの)」の2種類がありますが、国民年金に加入されている方なら、大概どちらかに加入できます。
これは将来もらえる年金が掛けた金額により増えます。そしてその掛金は全額所得控除になります。

確定拠出年金

これも、全額所得控除になるものです。年金の私的部分とでもいいましょうか、個人で掛金を運用し、将来年金や一時金として受け取るものになります。
従って基本65歳までは解約ができなくなっています。ですから、その場限りの短期の節税には向かないかもしれません。

ただし、掛金は所得控除になりますし、運用した利益は非課税ですし、他の投資商品と比べ、運用管理費も安く設定されています。
受け取るときも退職所得控除や公的年金控除が受けられるものなので、制度をよく理解したうえで加入されることをお勧めします。

ふるさと納税

こちらは、かなり有名になりましたので、既に行っている方もいらっしゃるかもしれません。また、個人事業主に限らず、誰にもお得感のあるものになっています。
まだご存知のない方に簡単に説明しますと、「ふるさと」といいますが、自分のふるさとでなくても、ゆかりのない地方自治体でも構わず、自分の好きな場所を選んで「寄付金」を行い、その金額から2,000円を超えた金額が所得税の税額控除や住民税の税額控除を受ける対象となるわけです。

そして、その寄付を行った地方自治体からは返礼と呼ばれる商品が届くわけです。
すなわち、2,000円でその送られてきた商品を購入したようなものになります。
最近はその過熱ぶりが問題になり、華美な返礼を禁止する旨の通知が出ていますが、まだまだ魅力的な商品が全国あらゆるところにありますので、興味のある方は一度試してみてはいかがでしょうか。

生命保険・介護保険・個人年金に加入する

ここで紹介する生命保険、介護医療保険、個人年金は、生命保険料控除として、それぞれ最大で年間4万円控除されます。
生命保険4万円、介護医療保険4万円、個人年金4万円で、合計最大12万円です。これまでに紹介してきた所得控除の中では少額ですね。

生命保険料控除の対象になる、生命保険・介護医療保険・個人年金保険は、いずれも納税者が任意で保険会社と契約した一定の保険のことを指します。
ちなみに国民年金や国民健康保険料はこれに該当しません。これらは社会保険料控除に当てはまります。

確定申告の基礎知識

確定申告には「申告納税」と「還付申告」がある

確定申告とは1年間、つまり1月1日から12月31日までの間に所得のあった人が、所得税と復興特別所得税の額を「申告納税」する、また納め過ぎた所得税と復興特別所得税の「還付申告」をする手続きのことです。 手続きは原則、翌年の2月16日~3月15日に行います。 還付申告についてもう少し詳しく説明すると、所得間の損益通算や所得控除、税額控除などから所得税の再計算をして納めすぎた税金を還付してもらう手続きです。 代表的なものに医療費控除、住宅ローン控除などが挙げられます。なお、還付申告する場合の申告期間は、翌年の1月1日から5年間です。

一般的に確定申告が必要とされるケース

自営業やフリーランスまず、確定申告と聞いて想像しやすいのが自営業やフリーランスではないでしょうか。
自営業やフリーランスは事業所得にあたり、控除額を差し引いた金額よりも所得がある場合は確定申告の必要があります。
控除額とは基本的に基礎控除の38万円のこと。所得が38万円を超えると申告が必要です。一定額の公的年金を受け取っている場合公的年金受給額から生命保険や扶養などの所得控除を差し引いたのちに金額が余るようであれば、確定申告の必要があります。
また、公的年金の源泉徴収が行われていても、公的年金等の年間の収入金額が400万円を超えれば申告が必要なので注意しましょう。株取引で一定の利益を得た場合株取引やFXなどの譲渡で利益を得た場合、株式譲渡益課税制度に則って、確定申告を行わなければなりません。目安となる所得は、自営業などと同じ38万円。
ただし、自動的に源泉徴収が行われる源泉徴収口座で取引があった場合や、税金の優遇が行われているNISA口座での利益が120万円までであれば申告は不要です。不動産などそのほかの所得があった場合土地や家など不動産の譲渡があった場合、不動産を貸し付けて収入を得ている場合も確定申告が必要になります。

給与所得者でも確定申告が必要なケース

ここまで一般的に確定申告が必要なケースをご紹介してきましたが、給与所得者だからといってすべて確定申告が不要なわけではありません。
給与所得者でも、確定申告が必要なケースもあります。詳しく確認していきましょう。給与所得が2,000万円を超える場合多くは役員などに該当するかと思いますが、年間の給与が2,000万円を超えると年末調整の対象者となりません。別途確定申告で所得を申告する必要があります。ほかに20万円を超える収入がある場合年末調整を受けている会社以外にも副業として仕事をしている人もいるでしょう。そうした副業から年間20万円を超える所得がある場合は、確定申告が必要です。自営業ではなくて副業だから大丈夫だということはないので、しっかりと確定申告を行いましょう。2か所以上から給与を受けていて一定の収入がある場合2か所以上の会社で給与を受けており、かつ年末調整が行われない方の収入が20万円を超える場合も確定申告が必要になります。いわゆるダブルワークをしており、メインでない方の仕事での収入が一定を超える場合です。

確定申告が不要なケース

確定申告をしないケースは、確定申告が必要なケースに該当しない場合です。具体的にどのようなケースが考えられるか確認してみましょう。事業などにおける所得が38万円以下の場合確定申告における基礎控除は38万円です。基本的に、事業などの収入から経費を差し引いた金額である所得が38万円を超えない場合は、所得がゼロとなり、確定申告は不要となります。会社から年末調整を受けている場合会社員として勤務している場合、基本的には会社側が年末調整を行っています。年末調整は会社員の確定申告のようなものですから、別途確定申告をする必要はありません。副収入が20万円未満の場合ダブルワークや副収入で給与所得以外の収入がある場合でも、合計して年間20万円を超えなければ基本的に確定申告は不要です。公的年金400万円以下で源泉徴収をうけている場合公的年金の受給者の一部は確定申告の必要がありますが、公的年金の源泉徴収を受けており、かつ年額400万円以下、ほかの所得が20万円を超えなければ確定申告の必要はありません。

確定申告不要でも確定申告をした方が良いケース

一般的に確定申告が不要である場合でも、確定申告をした方が良いケースもあります。それは、余分に所得税を支払っている場合です。事業で赤字が出た場合基本的に自営業者などは38万円以下であれば確定申告は不要ですが、事業が赤字となった場合は、還付が受けられる可能性があるほか、住民税が考慮されるため、確定申告をしたほうが良いです。給与所得者でも確定申告をした方が良い場合実際に払った額から保険金を引いた医療費が10万円以上の場合、災害などで資産に損害があった場合などは還付を受けられます。さらに、生命保険料など控除漏れがあった場合も還付を受けられるので、確定申告を行った方が良いです。年の途中で退職した場合年の途中で退職し、年度末に就職先が決まっていない場合は、年末調整が行われていないことになります。生命保険料や社会保険料などの支払いで還付が受けられるので、確定申告をした方が良いでしょう。アルバイト先などで源泉徴収されている場合主たる勤務先でないアルバイト先や副業先で源泉徴収が行われている場合、申告すれば所得税が還付されることがあります。