自己資金とは何か?

創業融資を受ける際にどの程度の自己資金を用意したら良いのかという疑問を持たれる経営者の方は多いものです。
自己資金の金額は、目標とする融資金額や融資プランの種類によって異なりますが、おおよその目安も存在します。
その目安を知っておくことは有用ですが、その前提として、そもそも「自己資金」には何が含まれるのかを理解しておくことも重要です。
そこで以下では創業融資における自己資金の定義を確認するとともに、準備すべき自己資金の目安について紹介したいと思います。

自己資金の定義とは?

自己資金とは、文字通り、自分で用意した資金のことですが、そこに何を含めるかについては判断が難しいものも存在します。
自己資金の基本的な考え方は「通帳で確認できること」と「出所が不明な資金ではないこと」です。
この基本的な考え方を踏まえた上で具体的な項目について考えてみることにしましょう。

貯金や預金

将来の起業に向けてコツコツと貯めてきた資金は、創業融資の審査の上でも、問題なく自己資金と判断されます。
また、計画的に資金を準備してきたこと自体が、経営者の資質として高く評価されますので、審査上も有利になります。
資金を自分で増やしてきたという事実が通帳の記録などで確認できるようにしておくことが重要です。

資産を売却した資金

預金として保有していた資金だけでなく、有価証券など金融資産として運用していたものを売却して創業資金にあてる場合も自己資金として認められます。
(1)の貯金や預金と同様、堅実に資産形成してきたと評価されますので、金融機関からの心証も良いでしょう。
また、自動車などの自己資産を売却して創業資金にあてる場合も自己資金と判断されます。

みなし自己資金

すでに事業を開始していて、設備投資などに資金を使っている場合でも、その金額を自己資金と判断してもらえる場合があります。
そのような資金を「みなし自己資金」と呼びます。広告費や交際費として費消してしまった資金は自己資金として説明するのが難しい場合もありますが、製品を生産するための機械や店舗設備に投資している場合には「みなし自己資金」と判断される可能性が高くなります。

親類、第三者からの資金拠出

親や兄弟などの親族、また友人などの第三者から創業資金を援助してもらうこともあると思います。
このような資金援助を自己資金と判断するかどうかは金融機関や融資プランによってケースバイケースです。
たとえば、日本政策金融公庫の創業融資などでは自己資金の範囲を広く捉えてもらえる場合が多いようです。
贈与契約書を締結するなどして資金拠出の理由を明確にしておくことが有用です。

タンス預金

上記(1)から(4)のいずれの場合でも、預金通帳などで入出金が明確になっていることが重要です。
たとえば、タンス預金のように現金で保有しているものは自己資金として認められないケースが多いので注意が必要です。
タンス預金を直近で預金に預け入れた場合や振込人の名義が不明確な場合も自己資金とは見られませんので合わせて注意しておきましょう。

自己資金の目安について

創業融資の審査でもっとも重視されるのは、創業計画書(事業計画書)の内容がしっかりとしたもので実現可能性が高く、融資金額の返済が見込まれることです。
それと並んで、自己資金の金額も融資金額や返済条件に重要な影響を与えます。
これは自己資金の比率が高い方が確実な返済が見込まれるという理由のほか、計画性の有無という経営者の資質にも関係するからです。

自己資金の目安としては、たとえば、日本政策金融公庫の新創業融資の場合、従来は創業資金の3分の1以上が要件とされていた自己資金の金額が、近年の要件緩和で10分の1以上とされています。
そのため、自己資金が少ない場合でも積極的に創業融資にチャレンジする価値があります。

ただし、返済に追われながら立ち上げ期の経営をするのは大変なことです。
また、十分に資金を準備していない状態で開業することは事業の計画性に欠けるということもできます。
そのため、自己資金は多いに越したことはなく、創業資金の3分の1以上は自己資金を準備することをおすすめしたいと思います。