会社設立により給与所得控除の利用ができる

会社を設立することによる節税方法のうち、効果が大きいものは、給与所得控除の制度を利用する方法が挙げられます。

給与所得控除

個人事業の場合

個人事業主は、【事業主本人=経営を行っている主体】 であるため、事業主本人には給与を払うことは出来ません。
そのため、個人事業者の税金は「収入-経費-青色申告特別控除(65万又は10万)」で計算した所得(利益)をベースに計算します。

法人(会社)の場合

法人(会社)の場合、【経営を行っている主体=法人(会社)】となり、個人事業者とは異なり【事業主本人≠経営を行っている主体】ということになるため、会社から事業主本人である社長に対して、給与(役員報酬)を支払うことが出来ます。
また社長に対する給与は、会社の計算上、経費とすることが出来るために、会社の税金は「収入-経費-社長への給与」で計算した利益をベースに算出されます。
そして、会社から給与を受け取る事業主(社長)個人は、「給与-給与所得控除」で計算した所得をベースに税金を計算するため、その結果として会社としての事業の方が給与所得控除分、所得を押し下げる結果とになります。
すなわち、法人化した上で、事業主(社長)個人に給与として支給すると、個人事業主の場合に比べて、給与所得控除の分だけ事業主の所得を圧縮出来ます。
つまり、会社を設立すると自分に対して給与を払って税金を圧縮できるのがメリットの一つです。

なお、給与所得の金額は、給与額から給与所得控除額をマイナスして計算しますが、この給与所得控除額は、給与額に応じて、下記の通りとなります。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 ~ 3,600,000円以下収入金額×30% + 180,000円
3,600,000円超 ~ 6,600,000円以下収入金額×20% + 540,000円
6,600,000円超 ~ 10,000,000円以下収入金額×10% + 1,200,000円
10,000,000円超2,200,000円(上限)

会社設立により所得の分散が可能となる
・・・家族にも給料を支払い所得を分散させる

個人事業の場合

個人事業者の所得は、個人の税金にそのまま跳ね返ってきます。
得税並びに住民税は、累進課税(所得が増えるにしたがって税率が高くなる)であるために、事業が軌道に乗って所得が増えてくると、その分だけ税金の額も増えて来ます。
自分の所得を他の人に振り分けることは出来ないため、その方法として考えられるのが家族従業員に給与を支払って所得を分散させる方法ですが、個人事業者の場合は、事業専従者に対する給与の支払いは税務署への届出となっているために、自由に給与を支払うことは出来ません。

法人(会社)の場合

では、会社設立をして、個人事業を法人化するとどうでしょう。
法人の場合は、会社への仕事の貢献度に応じて、業務を手伝う妻や親族に対して自由に給与を支給することが出来ます。
法人税は、二段階の比例税率で課税されますが、前でも述べた通り、個人の所得税では所得が増えるほど税率が高くなる累進課税方式が採用されています。
すなわち、社長一人に所得を集中させてしまうことは高い税率が適用されるため得策とは言えません。
そこで、法人(会社)の場合は、事前届出等の規制を受けずに、役員の家族に対して仕事における貢献度に応じて自由に給与を支払うことが出来るため、役員の家族に所得を分散させることが可能となります。
所得税は個人単位で計算するため、出来るだけ家族単位で広く薄く収入を分散することによって低い税率が適用されるため、所得税における累進課税のデメリットを回避することも出来ます。
ただし、前でも触れた通り、給与の額が家族の仕事に見合っていることが条件です。

コラム

では、会社設立をして、個人事業を法人化するとどうでしょう。
法人の場合は、会社への仕事の貢献度に応じて、業務を手伝う妻や親族に対して自由に給与を支給することが出来ます。
法人税は、二段階の比例税率で課税されますが、前でも述べた通り、個人の所得税では所得が増えるほど税率が高くなる累進課税方式が採用されています。
すなわち、社長一人に所得を集中させてしまうことは高い税率が適用されるため得策とは言えません。
そこで、法人(会社)の場合は、事前届出等の規制を受けずに、役員の家族に対して仕事における貢献度に応じて自由に給与を支払うことが出来るため、役員の家族に所得を分散させることが可能となります。
所得税は個人単位で計算するため、出来るだけ家族単位で広く薄く収入を分散することによって低い税率が適用されるため、所得税における累進課税のデメリットを回避することも出来ます。
ただし、前でも触れた通り、給与の額が家族の仕事に見合っていることが条件です。

会社設立により経営者の退職金が経費となる

個人事業の場合

個人事業者の場合、事業主である自分に退職金を支給しても、個人事業としての必要経費にすることができません。
これは、個人事業者において、事業主が自分自身から自分に対して退職金を支給するという考え方が無いからです。

法人(会社)の場合

法人の場合、会社という別の人格からの支給となります。
そのため、社長への退職金は常識から外れた過大な金額でない限り、会社の損金に算入できます。
また、会社の場合は経営者や家族従業員への退職金であっても、適正な額であれば必要経費になるのです。
通常、退職金というのは額が大きく、それが必要経費になるというのであれば、その節税効果は絶大です。
しかも、退職金のメリットというのは、会社の必要経費になるというメリットだけでは無く、退職金を受け取った個人の節税になります。
勤続年数などによっては、ほとんど税金が掛からないというケースもあるほど、退職金は税金の面で優遇されています。
また、事業が軌道に乗ってくると、順調に利益を増やし様々な節税対策をすることが多々あります。
例えば「経営セーフティー共済」「各種生命保険」などを利用して、外部に潤沢に資金が残るようにします。
しかし、これらのお金は解約したときに収入となりますので、会社側は利益が増え、そのままであれば法人税が発生します。
そこで、計画的にこれらの生命保険の解約時期・満期時期に退職時期を合わせることによって、保険の解約金という収入を、退職金という会社の経費で相殺することが可能となります。
また、死亡退職金の場合には、相続税の非課税枠がありますので、相続税法上も有利です。
将来、事業主本人や家族従業員に対して退職金を支給して節税するのであれば、法人化することをお勧めします。

会社設立をすると生命保険料が経費になる

個人事業の場合

万が一の時に備えて、死亡保障を中心とした生命保険に加入している方も多いと思います。
所得税法において、個人の保険料の負担を軽減するために、生命保険料控除という控除があります。
個人事業の場合には、生命保険料控除として控除ができるのは、平成23年1月の契約から「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つの控除枠になり、全てあわせて最大12万円です。

法人(会社)の場合

これに対して法人では、経営者に対して保険を掛けている場合、法人が生命保険の契約者となり、被保険者を経営者、保険受取人を法人とすることによって、保険の種類と契約内容によりますが、1/2を経費計上出来ます。
いくら高額な生命保険料を支払っても、最大で12万円の所得控除しかない個人事業者とは大差があります。
また、経営者が死亡して会社が死亡保険金を受け取っ場合、経営者の遺族にはそのお金が入ってこないのではないかと心配する方もおりますが、そうではありません。
その保険金に相当する金額を、死亡退職金として会社から遺族に支給することによって、遺族に対してもお金が入ってきます。
但し、この退職金のうち一部は相続税の対象となりますので注意が必要です。

会社設立により赤字を9年間繰り越せる

赤字を繰り越すという制度は、例えば2017年に赤字が出てしまった場合に、翌年の2018年に黒字が出たら、昨年の赤字と差し引きして税金の計算出来る制度です。
事業を経営していると、個人事業者でも法人でも赤字になることはありますが、この赤字の取り扱いについて、個人事業者よりも法人の方が有利です。

注意)平成20年4月1日後に終了した事業年度から平成30年4月1日前に開始する事業年度において生じた欠損金については9年、平成30年4月1日以降に開始する各事業年度において生じた欠損金についてはは10年繰り越せます。

赤字の繰り越し

個人事業の場合

個人事業者で青色申告をしている際に、事業で赤字が生じた場合、他の所得と相殺しきれないときには、その赤字を翌年から3年間繰り越すことが出来ます。

法人(会社)の場合

法人で青色申告を行っている場合、繰越期間が個人事業者の場合は3年間でしたが、法人の場合は9年又は10年間年間に延びます。
すなわち、最大で9年又は10年間赤字を貯金して、利益が多く計上された年には過去に計上された赤字と差し引きをして、法人税を少なくすることが出来ます。
この制度を利用して、役員報酬額や消費税の税額も含めて、上手にタックスプランニングを行えば、節税が可能となります。

会社設立すると決算期を自由に選択出来る

個人事業の場合

個人事業主の場合、暦どおり毎年1月1日から決算日は12月31日であるため、人によって決算時期を変えることは出来ません。

法人(会社)の場合

会社の場合、会計期間を自由に設定することが出来ます。
それは、会社の定款に決算日を任意に定めれば、その日が決算日となります。
例えば、業種によって2月や8月に売上げが減少する会社や建設業のように3月に比較的忙しくなる業種もあります。
どの業種においても、月・季節によって多少の売上・利益・資金の変動があります。
会社にすることによって、これらの季節変動の売上・利益や資金繰りなどを考慮して、「どの月であれば決算の事務作業に余裕があるか」「何月くらいになれば当期の会社の売上や利益が分かるか」など、一年間のスケジュールや納税資金を踏まえながら、決算月を決めることが出来ます。

会社設立によりが銀行融資を受けやすくなる

個人事業主の方でも融資を受けている方は沢山おりますが、銀行などの金融機関から融資を受けるという状況においては、基本的には法人向けの各種融資制度などが充実していることからも、個人事業よりも会社の方が融資を受けやすくなります。
なお、国や自治体などが行っている各種助成金制度の利用においても、法人向けとして用意されている制度を活用することができるので、融資に際して選択の幅が広がります。

会社を設立すると役員の社宅家賃の大半が経費となる

個人事業の場合

個人事業の場合は、自宅家賃は自宅を事業に使用していないと経費になりません。
また、経費になるとしても事業で使用している割合だけです。
すなわち、店舗兼住宅などで、それが賃貸物件であるとき、その家賃については、家賃額における当該物件の床面積のうち、事業で使用している床面積の割合だけが経費として認められます。
つまり、事業として使用している分だけが経費計上可能で、居宅用として使用している分は経費計上できません。
自宅とは別に事業用の事務所を借りている場合、事務所の賃料は当然経費になりますが、事業に使用していない居住専用の自宅賃料は経費としては認められません。

法人(会社)の場合

法人の場合は、事業とは全く無関係である居住専用の自宅家賃も、約50%~80%を法人の必要経費にすることができます。

自宅を役員住宅とするためには、

  • イ 個人事業を法人化して、事業主が役員になる
  • ロ 現在賃借している住宅を、事業主でなく法人との賃貸借契約に切り替え、会社で契約する

法人は、社宅として毎月大家さんに家賃を支払いますが、役員はその賃料の20%~50%を社宅賃料負担金として法人に支払います。
そうすることで、実質的に賃料の50%~80%を法人の経費とすることが可能となります。
法人としては、事業に無関係な賃貸物件の家賃について、その賃料の50%~80%が経費にして利益の圧縮を図れます。
また、役員個人としても当該賃貸物件に家賃相場の20%~50%で住むことが出来るというメリットがあります。

会社設立すると出張の日当が経費になる

出張時にかかる旅費は、不相当に豪華なホテルに泊まったり、観光をしない限り経費となります。
この旅費には交通費、宿泊費、日当などが含まれます。

出張日当

個人事業の場合

個人事業者の場合、これらの旅費のうち、事業主が地方へ出張した際に、自分自身の事業から出張の「日当」を支払いしても経費とはなりません。
個人事業主は、自分自身に対しては日当は支払えないため経費となりません。

法人(会社)の場合

しかし、法人の場合は経営者個人とは別の人格となるため、法人から会社経営者である個人への「日当」も経費となります。
費の中で、交通費、宿泊費は実費精算をして経理処理が出来ますが、日当は給与としての性格があるもので、実費精算は不可能です。
日当が「一定の基準」に基づいて定額制で支給されている場合は、会社の経費として認められます。
しかも、支給される経営者個人や従業員側も給与として課税されません。
ここでいう「一定の基準」とは、旅費規程といわれるものに基づいて支給する必要があります。
旅費規程には、下記の二つの基準が必要とされます。

  • イ 役員、従業員を通じて支給額にバランスが保たれている
  • ロ 同業種、同規模の他社と比較して支給額に妥当性があること

特定の人に有利な支給基準であったり、一般よりも支給額が高水準である場合は、給与として所得税が課税されます。
特に役員の場合は、金額が大き過ぎると役員賞与とみなされる可能性もあるので、注意が必要です。
さらに、旅費規程を運用する場合は、旅費精算書のほか、出張報告書も保管することが大切です。
これら資料は、旅費の実費精算に代わる証拠資料であるため、大切に保管する必要があります。

コラム

旅費規程を使用した節税

東京でIT関連事業をしているA社は、九州に大切な取引先があるために、毎月九州まで行く必要があります。
今までは、交通費を実費にて経費処理してましたが、株主総会の承認を元に旅費規程を作ることにより、その旅費規程に記載されている金額を基準に旅費を出すことにしました。
九州まで飛行機で出張する場合の正規料金は、往復約5万円であり、この金額を基準として旅費規程に定めました。
また、宿泊代は10,000円、日当を一日3,000円、夕食代2,000円とも織り込みました。
これにより、1回の出張につき約10万円を経費にすることが出来、旅行会社などのパックを使えば、九州までの旅費は2泊付きで5万円前後であるために、出張1回あたり5万円分の節税が出来ます。

会社設立により優秀な人材が集まり易くなる

優秀な人材の確保というのは、ある意味で経営者として非常に大切なことですが、会社を設立すると、個人事業に比べて優秀な人材を確保しやすくなります。
もし、自分自身の就職先が個人事業者であった場合、社会保険制度や退職金制度などに対して不安に考える方もいると思います。
社会保険制度を備えていて、組織もしっかりとしている会社は、従業員も安心して働くことが出来るため、個人事業者よりも法人に優秀な人材が集まりやすいのも事実です。

法人では減価償却を任意ですることができる

車両や事務機器などの固定資産を購入したときは、耐用年数による率によって減価償却費を計算します。

個人事業の場合

この減価償却というものは、毎年行うのが基本であり、個人事業者の場合は減価償却費の計上は強制となります。

法人(会社)の場合

これに対して、法人税の場合は任意で減価償却費を計上できます。

会社組織にすると事業の継続性が可能となる

個人事業の場合

個人事業者において、その個人事業主が死亡した場合、死亡に伴いその経営母体としての組織が無くなる為、それ以上当該個人事業者としの組織として事業の継続が出来なくなります。

法人(会社)の場合

会社を設立して法人にすると、会社という組織が前面に出てくるために、経営者個人の事業であるというイメージは薄まります。
また、法人の場合、その資産・顧客などはあくまでもその会社のものであるため、優秀な後継者がいる場合には、引き続き会社としての組織は継続することが可能となります。

会社設立 メリット・デメリット
会社設立5のデメリット