取引銀行は複数持つべき。「メガバンク1行のみ」は、一番危ない!

銀行に、会社経営の強い味方になってもらうには、銀行と正しく付き合うことが重要です。その為にはまず、取引銀行は複数もつことです。
融資を受ける銀行は二行以上が良いと言われます。その理由としては以下のメリットがあるからです。

取引銀行が1行では競争原理がはたらかない

会社の取引銀行が一行だけだった場合、その銀行に言われた金利が適正な金利と思いがちです。
ところが二行以上と取引していれば二行の金利を比較できますのでそんなことにはなりません。

1行取引の会社のケースですが、地方銀行からの借入で金利4%という事例もあります。
また銀行員には融資のノルマがありますで、多少金利を安くしてでもライバル銀行よりもうちから借りて欲しいという心理が働きます

銀行同士の競争が生まれることで会社にメリットが生じます。

会社の業績が悪化したときに本当に助けてくれるのは・・・

創業当初から一行の銀行と取引している方は、昔からの付き合いだから、会社が苦しくなったときでもその銀行が助けてくれる、他行と付き合うのは後ろめたい、そう思いがちですが、銀行員はそのようには考えていません。
そもそも、銀行員は2~3年で転勤しますので、義理の付き合いというものは考えていないのです
引き継いだ担当者がそれまでの担当者と全く異なる考え方を持っている場合も多いです。

会社の資金繰りが苦しくなったときに、一行だけの取引ではその銀行に断わられたら即終わりです。
それが複数の銀行と付き合いがあれば、どこかしらは、助けてくれるはずです。

銀行は貸すお金が集中することを嫌う

銀行が1つの企業に対して融資する金額には限界があります。
もし銀行が1つの企業に対して多くの金額の融資を行い、その企業が倒産してしまった場合、銀行は大きな痛手をかぶります。

そうならないようにリスクを分散させるために、1つの企業に対して融資する金額は一定以上にならないようにしています。
より多くの銀行から融資を受けると、より多くの金額を借りることができます。
特に担保となりそうな資産がほとんどない場合は、1つの銀行から受けられる融資の金額は少なくなってしまいますので、複数の銀行から融資を受けることは有効です。

日本政策金融公庫と信金の2行と取引している会社のケースを紹介します。

  • 2000万円の借入をしたい
  • 取引銀行は、日本政策金融公庫と信金

この場合には、日本政策金融公庫と信金の両方に融資の申請をすることを勧めます。公庫は他の銀行と違って、保証協会をつけませんので、他行に融資申請していることが分かりません。
銀行同士だとしても、2行同時に融資申請を行うことは、悪い事ではないにしても、銀行にとってはいい気はしないものです。

結果、2000万円の融資申請が両方とも審査が下りて、4000万円を借り入れることが出来た、ということは意外とよくある事です。
予定の額よりも多く借りられることになったら、お金はだぶついてしまうが4000万円を借入れることはお勧めします。
潤沢に資金をもつことが会社の信用にも役に立ちます。

どうしても、余計なお金をもっていたくない、という場合には日本政策金融公庫への返済を優先させましょう。
銀行は一括返済されることを大変嫌います。莫大な事務の費用を金利で賄うので、一度に融資がなくなってしまう事は大きな痛手なのです。
その点、日本政策金融公庫は一括返済を全く気にしません。
その後の融資に悪い影響があるという事もないので、一括返済は日本政策金融公庫にするのがベストです。

年商別、取引すべき銀行はここだ!

年商3億円以下

地元の信用金庫+日本政策金融公庫の2行体制で十分です。年商が3億円を超えてくるようであれば、地元の地方銀行を付け加えます。

年商3億円~30億円

メインバンクを信用金庫から地元の第一地方銀行へシフトします。
第一地銀、第二地銀、信用金庫、日本政策金融公庫、商工中金の中で、3~4行がベターです。

この規模の会社には、日本政策金融公庫からの借入を強く勧めます。
日本政策金融公庫は、審査として通帳を見たり社長の個人情報を見たりします。
後々、他行と取引することになったとき日本政策金融公庫からの借入がない場合、
銀行は「過去に倒産歴があるのでは」とか「キャッシングで引っかかっているのでは」と穿った見方をします。
公庫からの借入が会社の信用となるのです。

年商30億円超

このクラスになりますと、運転資金で一度に借りる単位が1億円くらいになりますので、小さな信用金庫では対応が難しくなります。
そこでメガバンクの力が必要になってきます。

メインバンク(並行メイン)2行、サブメイン2行、サブバンク3行の7行体制が目安です。
このクラスでも預金量1兆円を超えるメガ信金であれば十分に対応可能です。

年商30億円以下の会社で、メガバンクとのみ取引されている社長に理由を聞くと、昔会社が苦しかった時に助けてくれた、などの理由が多いです。
しかし、メガバンクは方針が変わるのがとても早いです。

時の総理大臣が、中小企業にお金を貸す政策を打ち出せば一斉にその方針にシフトします。
一方で、時の総理大臣が、海外にお金を貸す政策を打ち出せば、中小企業からサーっと手を引いてしまうのです。

ちなみに、政府系金融機関を利用される際の目安は、年商5億円以下であれば旧国民生活金融公庫年商が5億円を超えれば旧中小企業金融公庫と商工中金です。

やってはいけない、他行の融資による肩代わり

取引銀行を増やす過程で、新しく取引の開始した銀行から融資を受け、その資金をもって既存の取引銀行の融資の一部を完済してしまう方がよくいらっしゃいますが、慎重に検討してください。

というのも、他行の融資による突然の肩代わりは銀行員にとって最大の屈辱だからです

銀行担当者やその上司は、顧客管理不足を問われ、業績評価や人事考課の査定でよい評価を得られなくなります。

もし他行融資による肩代わりをするのであれば、その銀行とは訣別する覚悟をしてくだい。取引行を一行減らすことになりますので要注意です。

どうやって取引銀行を増やす?

今、銀行からお金を借りられない会社は相当危機的であると言えます。

それくらい銀行はどんどんお金を貸してくれます。取引先を増やして、リスクを分散させましょう。

銀行の営業担当が会社に来ていない場合は、税理士と共に金融機関を訪れましょう。

間違っても、一人で支店の窓口で「お金を貸して下さい」というのはやめて下さい。

一見さんで急に窓口に現れる社長よりは、税理士の紹介がある方が、その後の付き合いもスムーズになります。

支店窓口には融資課という所がありますが、ここは金融機関の営業担当者が持ってきた融資案件に対して審査をしてノーをだす課です。

融資課に直接やってきた融資案件の審査を下ろして、その会社が倒産してしまったら立場がなくなりますから、基本ノーをだすスタンスだと解釈して下さい。

税理士を通して銀行に紹介してもらい、電話をして営業担当者に会社に来てもらう、これが新たに金融機関と取引をはじめる方法です。

まとめ

無借金経営を目指す会社もありますが、中小企業は潤沢な資金を持っている事で、信用を得、成長もしていくことが出来ます。

取引すべき銀行を見極めて、資金面での強い味方をつけましょう。