相手から貰った領収書に不備がある場合どうするの?

相手から貰った領収書に不備がある場合どうするの?

領収書を書いてもらうときに店の人から「上様でいいですか」と尋ねられることがあると思います。
つい面倒で「いいですよ」と言ってしまいそうですが、実際にはそれが問題となることもあります。
今回は、記載すべき事項が省略されているなど、領収書が完全ではない場合の問題点とその対処法についてお話ししたいと思います。

宛名が「上様」や空欄となっている場合

領収書の宛名が「上様」や空欄になっている場合でも、実務上はそのまま損金に計上されていることが多いと思います。
ただし、税務調査が入った場合に、金額が重要なものや内容が不明確なものがある場合には受け入れられない可能性もあるので注意が必要です。

また、「経費にできるかどうか」という場合、「所得税や法人税において損金となるかどうか」を意味していることが多いのですが、実は、消費税上の扱いにも気をつけなければなりません。

消費税の課税事業者になっている場合、納付税額を計算する過程で差し引かれる「仕入税額控除」の根拠書類には記載すべき事項が定められています(消費税法30条9項1号)。
具体的には、①書類の作成者の氏名、②年月日、③資産または役務の内容、④対価の額、⑤書類の交付を受ける事業者の氏名などですが、このうち⑤はまさに宛名に該当する項目です。

消費税法や通達では、小売業、旅客、飲食など一定の場合に記載要件を緩和していますが、それに該当しない場合には、記載要件を満たす書類でないと「仕入税額控除」できないのが原則ですので、十分注意しましょう。

収入印紙が貼られていない場合

たとえば、売上にかかる領収書(いわゆる17号文書)の場合、記載金額が5万円以上100万円未満であれば200円の印紙が必要になります(印紙税法別表1)。

それでは、収入印紙が貼られていない領収書では経費処理ができないのでしょうか。
実は、収入印紙が貼られていないこと自体は領収書の効力には影響しません。
そのため、それをもとに経費処理をしても問題はありません。

「領収書としての効力は認められるにしても、コンプライアンス上は問題があるだろう」と思われるかもしれませんが、収入印紙を貼付して消印する義務は領収書の発行者にありますので、領収書を受け取った側が咎められることはありません。

金額欄が空欄の場合

まれに金額欄が空欄の領収書をもらうこともあります。

このような場合に「好きな金額が書ける」とばかりに多めの金額を書いて経費にすると、これは明らかな脱税になってしまいます。

「税務署には本来の金額などわからないのでは?」と思われる方がいるかもしれませんが、税務署が行う調査には「反面調査」というものがあります。
反面調査とは、調査対象となっている事業者自体ではなく、その取引先を調べるものです。
税務調査の過程では必要に応じて反面調査が行われますので、特に金額的重要性が高い取引や反復継続して行われている取引では不適切な処理が発覚する可能性も高くなります。
いずれにしても、金額が空欄になっている領収書をもらった際は必ず金額を記入してもらうことが大切です。

領収書を紛失してしまったときの対処は?

領収書などの書類の管理は適切に行うべきものですが、ときには「領収書を一度はもらっているものの、どこかにいってしまった」というケースも考えられます。
領収書を紛失してしまった場合でも、取引関連書類と金融機関の出金記録があれば、経費処理できることもあります。
しかし、現金支払の場合で領収書を紛失しているときは支払を証明するものがないことになります。

その際には、相手先に領収書を再発行してもらうのが一番良い方法です。
ただし、相手先によっては「領収書の再発行はできない」と拒否されることがあるかもしれません。
再発行ができないという場合には、相手先が保管している「領収書の控え」をコピーしてもらうなどの方法で対処しましょう。
それも無理という場合には、「出金伝票」を起票して日付、相手先、内容、金額などを記載するとともに、実際に取引が行われたことを証明する書類を添付して保管するという方法によるしかないでしょう。

まとめ

以上のように、領収書に不備がある場合でも様々な対処方法があります。
しかし、事後的に対処するのではなく、適切に領収書が入手できるように相手側に依頼したり、不備に気づいたときは、その都度、善処を求めたりすることが望ましいといえます。