起業資金はいくら必要? 足りないときはどうすれば? 独立開業の資金計画3ステップ

起業資金はいくら必要? 足りないときはどうすれば? 独立開業の資金計画3ステップ

起業を目指すなら、必ず必要になって来るのが起業資金、開業資金です。業種や形態などによって、金額は大きく変わりますが、ほとんどの場合決して安い金額ではありません。

開業資金はどれだけ必要なのか、どのように調達するのか、漠然としていて起業へ向けて前進できずにいませんか?

ここで紹介するポイントを抑えることが出来れば、まずは起業へ向けてのスタートを切ることが出来ます。

今回は

  1. 開業資金を算出するには、設備資金と運転資金と予備資金に分けて考える
  2. 自己資金は開業資金の3割が目安
  3. 開業資金を集める4つの方法

このポイントに焦点をあてて検証していきます。

開業資金を算出するには、設備資金と運転資金に分けて考える

設備資金とは、店舗、工場、機械、備品、車両などにかかる資金をさします。対して、運転資金は、商品仕入、経費支払資金などをさします。

開業までにかかる経費を含めて、資金計画を立てることが重要です。

開業に至る(売上を計上できるようになる)までの経費を開業資金に含むことで、開業時にすでに資金不足に苦しむという、暗いスタートを避けることが出来ます。

店舗を構えて起業する場合の開業資金

このケースは、店舗物件にかかわる費用が、開業資金の中で占める割合が最も高くなります。敷金・保証金・仲介手数料・前家賃など、しっかり算出しましょう。

さらに、改装工事や設備費用、什器、飲食店なら食器やテーブル、ネイルサロンなどの美容サロンならソファ、作業テーブルなどの備品関係も、店舗規模にはよりますが大きな額となってきます。

許認可が必要な場合に、申請を専門家に頼む場合の費用も算出します。

重要なものが、広告費です。

フリーペーパー広告やネット広告、様々なものがありますが広告費ゼロでは誰もお店の存在を知ることが出来ません。

どんなに自信があっても、SNS拡散によるお店の認知度UPは、事業が軌道にのったあとに期待しましょう。

実店舗はナシ、ネットショップ等の開業資金

このケースは、物件にかかわる費用が抑えられることが特徴です。

事務所を構えるのであれば、家賃、保証金が発生しますが設備費用はかからないので、店舗を構えての起業にくらべ費用を抑えることが出来ます。

ただし、ネットショップ構築のための費用は、モール出店、専用システム構築、レンタルカート、どのケースでも少なからずあります。

そしてこの場合も広告費は必要です。

自宅で起業する場合の開業資金

このケースも、物件にかかわる費用を抑えることができます。

車や作業道具、自宅サロンであればソファや美容設備などが必要となれば費用となってきます。

実店舗ナシの形態と同様、広告費は必要です。

よくあるパターンとして、主婦の方が自宅でサロンを始め、広告費はかけず友人や口コミ、SNSでの集客のみというケースがありますが、これは趣味の域を超えるものではなく、売上を期待する事は出来ないでしょう。

法人(会社)としてスタートする場合

店舗に有無にかかわらず、起業するときに、個人事業主としてはじめるのか、法人としてはじめるのか、目指す形態によっては非常に悩むところです。

それぞれにメリットデメリットがあるので、自分に合うものを見極めなければなりません。

「それぞれのメリットデメリット」については、とても重要ですのでリンク記事も是非ごらんください。

そしてその登記諸費用に、「株式会社」として起業するのであれば15万円から25万円程度、「合同会社」として起業するのであれば、6万円から10万円程度かかります。

軌道に乗るまでの生活費

運転資金、設備資金には含まれませんが、重要な費用が当面の生活費です。

飲食店のケースでお話すると、約6割の飲食店が、軌道に乗せるのに半年以上かかるというデータがあります。(日本政策金融公庫調査)

半年分の生活費を、初期費用として準備することが出来ると、起業直後の肉体的にも精神的にもハードな生活に経済的なゆとりをもつことが出来ます。

緊急時の費用

想定外の出費というのは定期的にあるものです。この予備費を設定せずにいるとそのまま赤字が積み重なります。

次の表は、飲食店(ラーメン店)の開業資金の一例です。このように具体的な数字をだしていく事で、現実味がおびてきます。

インターネットで検索して相場を調べたり、中古品の価格をチェックしたりして、数字を入れていきます。

ラーメンスズキ家の初期費用

項目金額計算過程
初期費用名刺類4万円ショップカードと自分の名刺
案内状10万円開業ご挨拶印刷代
広告宣伝チラシ20万円
ウェブサイト30万円
保証金・敷金180万円家賃の10ヶ月分
仲介手数料18万円家賃の1ヶ月分
前家賃18万円家賃の2ヶ月分
内装等工事260万円居ぬき物件を探し出す
備品類50万円中古品で良いものを
初期仕入30万円はじめの食材、酒類
小計620万円
開業までにかかる経費人件費15万円開店前一ヶ月の研修
家賃15万円開店前一ヶ月の家賃
軌道にのるまでの生活費120万円生活費 20万円×6ヶ月
小計150万円
合計770万円
自己資金340万円8年間の準備期間にためたお金
出資父親100万円父親からの出資金
不足金額②330万円
借入親類0
友人知人0
日本政策金融公庫330万円残額を借入

現実的に適切な開業資金が決まったら、必要資金が減額できないか、自己資金を増やせないかを考えてみましょう。

居ぬき物件を探す、店舗備品に中古品を利用する、車を売る、不要な保険を解約するなど、資産の売却を検討します。

借入は極端に言えばリスクです。リスクは最小限に抑える必要があります。

自己資金は開業資金の3割が目安

自己資金ゼロからでも、起業は不可能ではありません。しかしそれは事業計画が完全なものである事が前提となります。

たいていの場合、自己資金が無い理由は、無計画であることが多く、また無計画や資金不足は事業の破たんをあっという間に招きます。

「2013年度新規開業実態調査」(日本政策金融公庫 総合研究所調べ)によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は27%となっています。

自己資金以外には、金融機関等からの借入金が61%、親族が6%、その他が6%となっています。(グラフ参照)

創業資金の調達先
「2013年度新規開業実態調査」(日本政策金融公庫 総合研究所調べ)

また、日本政策金融公庫の創業融資で、自己資金1/10要件があります。

これは、例えば両親に用立ててもらって自分の口座に振り込み、その通帳を提示しても要件をクリアしたことにはなりません。

見せ金として借入金と見なされます。いつから起業を計画し貯金を重ねていたかという点が審査ポイントになることもあります。起業を決意したと同時に積み立てなどを始めましょう。

開業資金を集める4つの方法

資金調達には様々あり、経営者は必ず知っておくべきテクニックもありますが、開業時に現実的に可能なものを解説します。

親戚・知人からの借入

大前提として、必ず返すという気持ちがなければ、甘えがでてきます。それまでの関係にヒビが入る程度で済めばよいですが、話がこじれて本業に集中できないとなれば本末転倒です。

クラウドファンディング

クラウドファンディングには、「寄付型」「購入型」「投資型」の3つの形態があり、それぞれ、会計処理や課税方法が分かれています。

多くの成功事例を眺めていると、流行にのりたくなるかもしれませんが、次のよくあるトラブルを頭に入れておくことも重要です。

  1. アイデアを真似されてしまう
  2. 目的を誤解され、または理解されずネット炎上
  3. 御礼の商品・サービスの受け渡しでトラブル
  4. 軌道に乗らず短期間で閉店・閉鎖

映画鑑賞が趣味である著者も、「近所に映画館を」という魅力に誘われ寄付をし、達成されたのちオープンした映画館の前を通ると嬉しくなります。

応援され続ける自身のある方は、クラウドファンディングを視野に入れてもいいかもしれません。

日本政策金融公庫の創業融資

税理士として一番お勧めなのは、この日本政策金融公庫の創業融資です。

政府系金融機関の実施する融資で、無担保・保証人なしという点が特徴です。

多くの開業者を支援してきましたが、ほとんどが、知人からの借入と日本政策金融公庫からの借金で、お金を用意されています。

融資を受ける条件を要約すると次のようになります。

  1. 新規開業者か、2期目の決算を終えてない方
  2. 日本政策金融公庫のさだめる、「雇用創出・経済活性化・習得技能」の要件
  3. 創業融資額の1/10以上の自己資金を確認できる方

この制度は一度否決されると、リベンジは出来ません。個人が独自に申請するよりは、専門家に相談すべきです。

自治体の創業支援融資

制度融資とも呼ばれています。

日本政策金融公庫の創業融資とよく比較されますが、審査期間や融資額の上限などにおいて、日本政策金融公庫の創業融資に軍配があがります。

審査も厳しく、減額融資も含めて、創業融資の調達に成功する割合は、申込者の30%ぐらいです。

まとめ

開業資金を算出し、必要な自己資金を見極め、適切な資金調達方法を決める。

これは経営者の基礎とも言えます。

この資金計画を飛ばしてしまっては、事業の展望は明るいはずはありません。

逆にこのポイントを押さえておけば、もう経営者の一員ともいえます。

何事にも言えることですが、「基本を大切」に自分のビジネスを成長させていきましょう。