会社設立 メリット・デメリット

個人事業者と会社(法人)組織にした場合、法律や税金がどのように変わるのか、どちらが有利・不利であるのかについて説明します。
そこでまず、法律上の予備知識として個人事業者と法人(会社)の違いを確認します。

会社設立12のメリット
会社設立5のデメリット

個人事業者と法人(会社)の違い

個人事業者と法人における責任の違いについて

個人事業主の場合

個人事業・・・無限責任(全責任を個人の事業主が負う)

個人事業における権利と義務は、全て個人事業主に帰属します。
事業に使用している預貯金・車両などの財産は、例え事業用であったも全て個人の財産です。
また、事業のために借りた借入金やローンなどの債務も全て個人の債務となり、仮に事業を失敗した際には、個人の財産を手放してでも債務の支払いに充てる必要があります。

法人(会社)の場合

法人(会社)・・・有限責任(株主は自分の出資した範囲内において責任を負う)

会社の場合は、「法人」という別の人格が法律上与えられます。
それによって、会社の名前で銀行口座を開設したり、借入金やローンを組むという契約をすることが出来ます。
会社の名前で契約を結んだ場合、その契約は会社だけに及ぶことになり、契約に伴う権利と義務は、会社を運営する個人には及びません。
仮に、会社が倒産しても債務の支払義務が及ぶ範囲は、会社の資産の範囲内であり、借入金等の個人保証をしていない場合は、経営者個人まではその責任は及びません。
また、個人事業主の財産や債務の考え方とは明確に異なり、将来経営者個人が破産や死亡をしても、事業用の財産を経営者個人の債務の返済に回すという事態を回避することが出来ます。

このように、個人事業者は無限責任、法人(会社)は有限責任であり、法人の場合は万が一事業に失敗しても、会社に出資したお金が帰ってこないだけであり、個人の財産を守れるという法人化のメリットがあります。

個人事業者と法人における責任の違いについて

当事務所において、個人事業にて数年行なっていたが、会社にしたいというご相談の中で、

  • 取引先からの要請で、そろそろ会社にして欲しい
  • 会社でないと取引してくれない
  • 個人事業のままだと、これ以上仕事の受注を取りにくい

などの理由を上げる方が多数おられます。

また、他の会社と取引する場合、当社と取引してもらえるか否かの選定理由の一つに、信用度というものがあります。

その信用を確認するためにものとして、一般的に決算書や確定申告書・商業登記簿謄本・信用調査会社のレポートなどがあります。
個人事業者の場合は、確定申告書などに記載されている情報が少ないため、そこから得られる情報が不足して、十分な情報を得られないために、他の事業者との取引に限界があるようです。

会社設立におけるメリット デメリット

法人・個人

個人事業から会社設立をして法人組織にすると節税が可能となる場合が多々あります。
その理由として、個人の税金である「所得税・個人住民税・個人事業税」と会社の税金である「法人税・法人住民税・法人事業税」の仕組みが異なるためです。

会社設立12のメリット
会社設立5のデメリット

個人事業・法人への課税

個人事業主の場合

個人事業者に関係してくる税金は、上記「所得税・個人住民税・個人事業税」の三種類ですが、個人事業者における最高税率は、課税所得が1800万を超える場合、所得税が40%・住民税10%で、合計50%となります。
課税所得が4000万を超える場合、所得税が45%、住民税が10%合計55%となります。

法人(会社)の場合

法人で課税される税金は、法人税・法人住民税・法人事業税の三種類です。
法人税では、会社がいくら利益を計上したかによって課税される税金です。
この法人税における税率は、中小企業の場合、所得400万以下ならば25.99%、所得800万以下ならば27.57%、所得が800万以下ならば27.57%、所得が800万円超ならば33.8%課税されます。
個人事業者に対して適用される所得税は、所得が増えるに従って税率も高くなる累進税率という課税ですが、法人において適用される法人税は、所得が800万円を境目として、2段階の比例税率となってます。

会社設立によるメリットとデメリットの両方ありますが、節税メリットの方が多く、その内容について個々に確認します。

個人事業者と法人における税金上のメリット分岐点

では、個人事業を営んでいる場合、いくら以上の利益(所得)であれば、個人事業者から会社設立した方が税金上のメリットがあるのかを確認してみます。

下記【第1表】を見ると、個人事業者において、利益(所得)が800万円の場合は税金合計で約160万となります。
これに対して、会社を設立して法人にした場合、個人事業者で計上された所得をそのまま役員報酬として支払った場合は、各種税金合計が約100万円となります。
よって、個人事業者にて利益(所得)が400万円くらいあれば、税金の計算上においては、法人にした方が有利となります。

個人事業の場合

【第1表】個人事業者と法人の税負担比較表

※個人

個人利益2,000,0005,000,0008,000,00010,000,00015,000,00020,000,000
青色控除650,000650,000650,000650,000650,000650,000
所得控除715,000980,0001,250,0001,310,0001,310,0001,310,000
課税所得635,0003,370,0006,100,0008,040,00013,040,0001,804,000
所得税31,750246,500792,5001,213,2002,767,2005,680,000
住民税0337,000610,000804,0001,304,0001,804,000
事業税056,000192,500289,500539,500789,500
税金合計31,750639,5001,595,0002,306,7004,610,7008,273,500

法人(会社)の場合

【第1表】個人事業者と法人の税負担比較表

※法人・利益をすべて役員報酬にした場合

法人利益000000
法人税000000
均等割70,00070,00070,00070,00070,00070,000
社長給料2,000,0005,000,0008,000,00010,000,00015,000,00020,000,000
給与所得控除780,0001,540,0002,000,0002,200,0002,200,0002,200,000
所得控除666,0001,070,0001,460,0001,550,0001,810,0001,880,000
課税所得554,0002,390,0004,540,0006,250,000109900,00015,920,000
所得税27,700141,500480,500822,5002,090,7003,717,600
住民税0239,000454,000625,0001,099,0001,592,000
税金合計97,700450,5001,004,5001,517,5003,259,7005,379,600
個人との差額-65,950189,000590,500789,2001,351,0002,893,900

【第1表】個人事業者と法人の税負担比較表

※法人・利益をすべて法人の利益にした場合(所在場所:東京都以外)

法人利益2,000,0005,000,0008,000,00010,000,00015,000,00020,000,000
法人税300,000750,0001,200,0001,668,0002,838,0004,008,000
地方法人税13,20033,00053,80073,300124,800176,300
法人市民税29,10072,700116,400161,700275,200388,700
法人県民税9,60024,00038,40053,30090,800128,200
法人事業税97,300267,700486,800678,7001,158,4001,638,200
均等割70,00070,00070,00070,00070,00070,000
社長給料000000
税金合計519,2001,217,4001,964,4002,705,0004,557,2006,409,400
個人との差額-487,450-577,900-369,400-398,30053,5001,864,100

給与所得控除

収入(万円)控除額
65万以下65万
180万以下40%
360万以下30% + 18万
660万以下20% + 54万
1,000万以下10% + 120万
1,000万超220万(上限)

税率と控除額

所得税税率(%)控除額(千円)
199万以下50
330万以下1097,5
695万以下20427,5
900万以下23636
1,800万以下331,536
4,000以下402,796
4,000万超454,796

所得控除(社長1人 40歳以下 東京23区在住)

個人事業主基礎控除 + 国民年金 + 国保
役員報酬基礎控除 + 社会保険料

個人事業税

仮で5%
(3,4,5%と3種類有り)
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